Clap Thank You !



感謝を込めて*o


(時間軸:空の少女と空の姫の間です。それでも大丈夫な方のみどうぞ)


 





 




───ドアをノックする音が二回聞こえて、心地良い眠りが遠のいていく感覚にゆっくりと目を開けた。それと同時に大きな窓のカーテンが勢いよく引かれて、目に入ってきた眩しいくらいの光に布団を一気に顔を隠すように引き上げた。


「おはようございます春様。朝食の準備が出来ております」

「んー…………よっし!おはよーっ」


一人で眠るには大きすぎるベッドで背伸びをして、身体をバネのように使ってベッドから飛び起きるという、朝から元気な春に大臣はそういえば、と口を開いた


「海斗様が部屋にいらっしゃらないのですが、何かご存知ですか?」

「えーっと、昨日は春と一緒に寝てた筈なんだけどー…どこいっちゃったのかなー?」

「海斗様が早起きするなんて事は有り得ませんから……夜中にどこかに行かれたのでしょう」

「朝まで一緒にいるって言ってたのにー……ん?何だろこれ」


枕カバーとベッドの間に見える細い棒のようなものを引っ張り出して……


「「!?」」



*little*



──ピンク色の花柄ハンカチを身体に巻き付けて、バルコニーのテーブルに座る海斗の大きさは見事な程の手のひらサイズの10cm。

朝起きたら身体が縮んでいて、訳の分からないまま春に叩き起こされて骨が何本か嫌な音を立てた痛みで目覚めるという、これまでの人生で三本の指に入る最悪の目覚めだった海斗は身体を包むハンカチを不満そうにつまみ上げた。

そんな不機嫌MAXのミニマム海斗を眺めてはその身体をツンツンと突っついて遊んでいる春は、海斗とは対照的にとても楽しそう。


「んー、不思議だねぇー」

「突っつくな…地味に痛い」

「なんか変なの食べたりした?知らない人から食べ物は貰っちゃダメなんだよー」

「ンな変なもん食ってねえって。身体もなんともねえし、つか、もっとマトモな服無かったの?」

「あー、こっちが良かった?」


それで手を拭けるのかと疑いたくなるような総レースのハンカチを取り出した春に、やっぱりコレでいい。と溜め息をついた海斗は額を押さえる。


「何でこんな目に……」

「普段の行いが悪いんじゃなくて?」

「うわ……」 


声のした方に視線を向けた途端、サーッと血の気が引いていったのが分かった。今、絶対会いたくない奴のうちの一人が来てしまった。

海斗の“今絶対会いたくない奴”の一人である奈々の目はとても面白いものを見つけて嫌な感じに輝いていて、春の隣の椅子に腰を掛ける。


「大臣が凄く具合が悪そうだったから、何か楽しい事があると思って来てみたのよ」

「大臣ってば、ちっちゃい海斗見た瞬間、頭が痛いって言ってどっか行っちゃったんだよー。大丈夫かなあ?」

「バチが当たったんだろ」

「あら?それは自分に対しても言えるんじゃない?」


クスクスと笑う奈々と、冷たい目で睨みつける海斗を、仲良しだなあ、と春の平和フィルター越しに眺めながら、ふと思い出したように立ち上がった。


「そうだ!奈々にもあげるね!」

 
パタパタとバルコニーを出ていった春はすぐに笑顔で戻ってきた。その手に抱えるのは大きなバスケットで、海斗はそれを見て更に顔を青くした。奈々はそれに気付いて少し実を構えた。


「昨日ねー、海斗にあげようと思ってクッキー焼いたんだけど……いっぱい作りすぎちゃって…」

「そ……そう。とっても美味しそうね、あ、そろそろ仕事だから……じゃあまた」

「……奈々」 


悲しそうに下げられた眉の下、潤んだ空色の瞳が上目遣いで奈々を見つめた。子犬のような何とも言えない愛らしさに奈々はきゅーん、と胸が締め付けられるのを感じた。

空色の瞳に促されるようにクッキーに手を伸ばして、小刻みに震える手を押さえながら恐る恐る口に含んだ。


「……あら?」

「おいしー?」

「ええ、とても美味しいわ。てっきりこのクッキーを食べて海斗が縮んだのかと思ったわ」

「えー、まさかぁーっ」

「………」


海斗はそんな二人を眺めながら、春のクッキーが原因でなくて良かったと、少し微笑んで、


「………」 


春との身長差が20cm程ある奈々が春と変わらない身長になっているのを見て、目を思い切り擦った。変わらない。いや、そんな筈は無い。


「ありがとう春、美味しかったわ。それじゃあまた、」

「仕事頑張ってねー!」


バスケットの中にはまだまだクッキーが残っている。春は海斗がクッキーを見つめているのに気付いて、ひとつ摘んで海斗の前に置いた。

ニコニコと期待を含んだ笑顔に、きっと悪意なんてこれっぽっちも無い。それが分かってるから、尚更断りづらいのだが


「………いや、いい」

「そうー?じゃあ他のみんなにお裾分けー
「ダメ」


これ以上クッキーを食べたら存在が消えそうだ。しかし、だからといって他の奴にそれを食わせるのは気に入らない。被害者が増えるとか、そんなのはどうでもいい。……ただ、


「春が俺の為に作ったんだクッキーを他の奴に食べさせるか。戻ったら全部食うから、他の奴にあげちゃダメ」

「ーーーっ!」


嬉しいのか顔を赤らめてコクコク頷く春がすっげえ可愛くて、抱き締められない自分のサイズに苛々する。


あー、早く戻りてぇ


(戻ったら縮んだ時の分まで思いっきり抱き締めてやるから覚悟しろよ?)



end...?

∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴

海斗がちっちゃくなっちゃった!!笑

いやあ、こうゆうのは書いてて
とても楽しいですねー。

次の拍手もこれにしようかしら?笑

ちなみに海斗が縮んだ原因はあの美味しいクッキー。作り方、材料、共に不明。副作用は食べた枚数に応じて身体が縮みます。


食べちゃった奈々さんはどうなったって?ご想像にお任せしまーす←


0801@瀬鈴

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