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「なにも、七人全員でぞろぞろいくこたぁねえ。敵に見つけてくださいと言わんばかりだぜ。」


足を踏み出したライトニングに待ったをかけたのはサッズだった。


「たしかに、七人つっても俺等の戦闘スタイルでいくと少人数で行動した方がいいな。」

「でも、二手に分かれるって言っても目的地は同じだし、何より大人数で囲まれたりなんかしたら、助けに入れないよ?」


スノウは賛成したが、ヴァニラは不安そうに眉を潜める。

何か、いい案はないだろうか、考え込むメンバーにウィッシュは声をかけた。


「みんな、見てくれ。」


ウィッシュの指差す先には、台の上に乗った装置があった。全員がそれを確認したのを見て、ウィッシュは口を開く。


「あの装置を作動させれば、多分向こう側への連絡通路が出る仕組みだ。」

「あの先に道がないのも、そういったわけか。」

「おそらく。」


ライトニングが、ウィッシュの説明で何かひらめいたようにウィッシュを見やる。一つ頷いて、ウィッシュはまた視線を外してみんなを見渡した。


「装置を作動させる組と、目くらましになるに組に分かれるってのはどうだ?」

「なるほど、攻撃している隙に装置を作動させて、向こう側へ渡る、それなら増援に来られても、全員でカバーできるというわけか。」


ならば、といってライトニングは全員に目を配る。


「サッズとホープ、私で装置を作動させよう。」

「んじゃ、残る俺とウィッシュ、ヴァニラとファングで暴れまくればいいわけだな!!」


拳を握り締め、覇気を剥き出しにしているスノウは、いち早く通路を走っていく。スノウに続くようにファングは目元を楽しそうに下げてはいるが、その瞳はまるで獰猛な獣のように見える。獲物を狙う目をしている彼等は、何よりも先にかけだしてしまった。

頭を抱えたライトニングの肩に手を置いて、ウィッシュは装置を頼むな、とホープとサッズに言ったのち、すぐさま猛獣二名を追っていく。


「逃走中のルシだ!!気をつけろ!!」

「あー、無駄無駄。人数が足りないって。」

「言って聞くようなたまじゃねえだろ、軍人なって者は、よ!」

「まぁたしかに言葉よりも行動する方がはやいよ、な!」

「スノウにだけはいわれたくない、わ!」

「喋りながら倒してるなんて、みんな器用だよね、よっと!!」


ファングとスノウをアタッカー、ヴァニラをブラスターにし、ウィッシュのエンハランサーで強化後、アタッカーにチェンジ、そして猛攻撃で相手を沈めるというなんとも力押しで半分以上進んでいた。

お喋りをしながらも(ほとんどが憎まれ口やスノウの無鉄砲さ、下界組の仄々したものである)勢いの止まらない彼等に怯えるPSICOMの精鋭部隊に同情の視線をホープは投げかけた。

長い長い艦首通路を抜ければ、そこにはダイスリーと、その横で不適に笑っているジル・ナバート中佐がいた。


「会いたかったぜ、中佐。」


いつものからりと笑っているサッズが、こんなにも怒りを表しているのをウィッシュははじめてみる。ヴァニラは、悲しそうにサッズから視線を外し、そっと目を伏せた。


ナバート中佐がダイスリーの傍を離れ、前へと歩んでくる。不敵な笑みを湛えているのは相変わらずだった。


「閣下、急ぎ退避を。時間を稼ぎます。」


この人数相手に、たじろぐことも無く平然としていられるのは、やはり勝機を彼女が見出しているからだろう。

彼女の戦闘体勢に、ウィッシュ達も構えを取る。


「ウィッシュ中尉、貴方には本当に失望しましたわ。」

「そりゃどうも。」

「出世の負け組みとなった貴方に、最早なんの興味もありません、ここで死になさい。」

「お生憎様、人生の勝ち組になるから死ねないな。中佐も出世のことばっかり考えてると婚期逃すよ?」

「んな…っ!!?」


見る見るうちに顔を赤くして憤る彼女に対して、ウィッシュは不審に思い、視線をジル・ナバートからダイスリーに移した。

彼女が退避を、と促したダイスリーは一向に動くことをしなかったからだ。

だからかもしれない、次に彼がいち早く行動できたのは。


「退避するのは君の方だ。…いや、退場だな。
   人間の出る幕は終わった。」


いつもと様子が違うダイスリーにジル・ナバートも訝しげに思い、ダイスリーを仰ぎ見る。

ジル・ナバートの閣下!?という声と同時に、ウィッシュは走り出した。

しかし、同時に飛んできた銀色の玉は、迷うことなくジル・ナバートに吸い込まれてしまう。

倒れこむ彼女を守ろうとした腕は、床との接触を避けるために終わる。

ピクリとも動かないジル・ナバートに、一同騒然となった。







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