**.恋せよ 花舞え.**
「酷い怪我してるのに、僕なんかを助けに来たりして、その上更に…!ウィッシュ兄さんは死ぬ気なのか!?僕を庇って死なれるなんて、もう真っ平なんだ!!」
掴みかかるようにしてウィッシュの胸倉を掴んだホープを、ライトニングは抑えようとするが、それを止めたのは他でもないウィッシュだった。
愁いを帯びたその表情を、ホープは怖気づくことなく貫く。
「ホープ、“自分なんか”なんて言ってるがな、俺にとってお前は、何に変えても守りたい者であるんだ。」
「だからと言ってそれでウィッシュ兄さんが死んだりなんかして、僕が嬉しいと、守ってくれてよかったと思ってる?」
「それは、思っていない…」
「うそばっか、思ってるくせに。『自分なんか死んでも構わない、ホープさえ生きていれば』って。」
ホープの言葉に、ウィッシュのどこかでいけないとわかっていても、止められない何かが弾けた。ホープの胸倉を逆に掴み、幾分小さいその身体を自分の方へと引き寄せる。
それによりホープはつま先だけで地面に立たなければならなくなった。
「お前はノラさんの形見だ!!お前に何かあればノラさんにも、バルトさんにも合わせる顔がない!俺がお前を守るのは最早義務と言ってもいいんだ!!」
「いい加減にしろよ!!そんなの!自分のために、僕を利用しているだけじゃないか!」
「!!?」
ホープを守らなければ。いつしかそれはウィッシュを雁字搦めに縛りつけ、ホープを命に代えても守らなければならないという偽りの義務感をウィッシュに植えつけていた。身動きが取れていないちぐはぐなウィッシュ。心がホープを守らなければという気持ちのまま、凍り付いていたのだ。
考えてみれば、ウィッシュは誰からもホープを守れなんていわれたことはないのだ。ノラにもバルトにも。
一人で、自分勝手に縋っていただけなのだ。
ホープを守るのは自分である。自分の居場所はホープの前。そうやって決め付けて、ホープを傷つけてきたのは他でもないウィッシュである。
「ウィッシュ兄さん、僕はもう守られているだけの何も知らない子供じゃないんだ。」
だらりとホープの胸倉を掴んでいた腕が垂れる。同時にホープはウィッシュに言い聞かせるように喋る。
ホープの腕も、ウィッシュの胸倉から手を放し、透き通るウィッシュの白銀糸の髪に指を通した。
「僕は、ウィッシュ兄さんが僕とライトさんを守りたいといったように、ウィッシュ兄さんだって守りたいし、傍にいたい。支えていたい。」
「……っ、」
「そう思う気持ちは、いくらウィッシュ兄さんでも止められはしないよ。」
「!!」
そうだ、思い続けること、考え続けることは誰にも止められない。霊獣ディアボロスも言っていたではないか。
考える事を放棄するなと。