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ウシュムガルがいなくなり、元の広さを取り戻した広場は、先程と打って変わって静けさも取り戻した。ホープはライトニングに“お守り”を差し出した。


「ノラ作戦……失敗です。」


どれだけの悲しみを、苦しみをこの子は背負ったのだろうか。どれほど悔しい思いをしたのだろうか。まだ子供のホープに、作戦と称して復讐という悲しい連鎖を起こさせようとしてしまった。しかし、その高く困難な壁をも乗り越えて、やっとホープはこの言葉を吐けたのだ。苦笑とも取れるその笑みは、やっと崩せたホープの紛れもない成長だった。


「守るから……私が守る。」

「…できたら僕も、ライトさんを守れたらって。」


こつん、とホープの額を小突いたライトニングは近寄ってきたウィッシュに視線を投げる。彼の視線はずっとホープにあった。

そしてホープもまた、ライトニングを旅している最中はずっとウィッシュ兄さんウィッシュ兄さんと言葉には出さなかったが見続けていたのだ。


「ウィッシュ兄さん…。あの、僕…。」

「うん、ホープは強くなったけど、やっぱりまだまだ修行が足りないな。」

「ぇ、」

「一緒に強くなろう。」


頭だけ、包むように寄せればホープは涙を交えた声音で擦り寄ってくる。


「本当はね、ちょっとだけウィッシュ兄さんを憎んだ時もあった。なんでって思うときもあった。」

「うん。」

「でも、その度にウィッシュ兄さんとの思い出とか、笑った顔とか出てきちゃって…っ」

「うん、」

「どう、しても、もっ、かい、ウィッシュ兄さ、んに、会いたかった…!」

「うん、俺も、俺も会いたかった。」


赤い洋服に、深い色の染みが滲んでいくのを感じながら、ウィッシュは改めてライトニングを見る。


「ライトニング、俺は欲張りだから。ホープも守りたいけど、お前も守りたいんだ。」


ホープはライトニングを、ライトニングはホープを守りたいと言ったが、ウィッシュはそのどちらも守りたい。

スノウが人一人守ることの難しさを証明し、それを目の当たりにしても尚二人の人を守りたいと感じてしまう。


「俺は、ライトニングの前に立ちたいとかじゃなくて、背中を守りたい。」


彼女は彼女の道を行く、それでいい。だけどそこに、俺も一緒に歩いていたいと思ったのは今日昨日じゃない。そりゃもう五年前から思い続けていることなのだ。

立ちふさがる敵や障害を蹴散らす武器ではなく、その身を守る盾ではなく、背中を支えるものになりたい。だがそれは、ウィッシュが決めることではない。

精々頑張るよ、と零したウィッシュは倒れているスノウを起こすべく、歩いていく。


「ライトさん、僕が言うのもなんですが、『言うこと言わないと、ずっと苦しい』ですよ。」

今度こそ本気で殴られるかもしれないと感じたホープはすぐさまウィッシュの元へと退散していってしまった。










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