**.恋せよ 花舞え.**
「…ウィッシュ、」
「スノウ、起きられたか…?」
「ああ、悪い、重たい、だろ……っぐ!」
「無茶すんな。いいから身体預けてろ。」
眼前に立ちふさがる壁、そして一本の梯子。これをわたらなければ、上には登れない。しかし、いくら負傷していないウィッシュでも二人を抱えて登ることは難しい。
かといって二人を交互に上へ上げていても、もしその間に襲われたりなんかすれば、ひとたまりもない。
どうしたものかと悩んでいたところで、スノウが目を覚ました。
「ウィッシュ、悪い…、俺…っぅ…っ!」
「いい、もう喋んな。傷悪化するよ。」
「聞いて、くれ……、ホープの、ノラさんを、戦場に巻き込んだのは……俺だ。」
「 !」
切り出された会話の内容は、あの日、ハングドエッジでパージされている時のこと。スノウは支えられながら重たい口を再度開いた。
「俺、知らなくて…、ホープに、酷いこと言ってたんだ。家に帰してやるとか、軍隊と戦うのはバカだけでいいとか、死んだ人間に償いはできないとか……。」
「……。」
「全部、全部自分のことしか考えてないで、ホープを傷つけてた…ウィッシュ、お前も。」
ごめんな、と呟かれた声のなんと覇気のないことか。
確かにそうだった。
スノウの放つ言葉に、それに傷ついたホープの発した言葉に、重なり合うように傷ついたのは他でもないウィッシュだ。
しかしどちらの言葉も理解出来たゆえにウィッシュはどちらも咎めることができなかった。そしてまた話を切り出すことも。臆病で、弱虫で、後ろ向きにしか物事を捕らえられない。そのくせ周りにはポジティブに接し、自己中心的に見解を広げてきた。
「……登れるか?」
「…ああ。」
うめき声を上げながら梯子を登ったスノウと、ホープを肩に担いで登ったウィッシュは、再び歩を進める。
梯子を上りきったウィッシュは、ホープを再び負ぶりスノウを支えながら歩き出した。