オレンジ

 今日は珍しく、秩序の戦士たちが全員聖域に集まって静かなひと時を過ごしていた。その中でも一人だけその輪の中に入らない青年がいた。

 今日も秩序の戦士たちからちょっかいを出されたり、愛でてもらっているカツヤは、そんな青年、スコールの傍に近寄ってみた。

「 すこーる、すこーる!なにしてるのー? 」
「 何をしているように見える? 」

 見ればわかるであろう事を、敢えて聞いてくる(多分、本人にそのつもりはないのであろうが)カツヤに、スコールは表情を崩さずに言った。

「 んーっと、んっとね、みんなをかんさつしてた? 」
「残念、はずれだ」

 正直、何をしていたかなんていわれても、息をしていたくらいしか思いつかない。

 当てが外れたカツヤはつつくと柔らかいその頬をぷうと膨らませて両手を突き出して足に擦り寄った。これはカツヤが抱っこをせがむポーズだ。

 ひょいと簡単に持ち上がるその身体の背中をポンポンと軽く叩きながらそのままにしている。

 すると、途端に自分の胸から大きな音が聞こえた。正確には、抱っこしているこの小さな体から、だったが。

「 ……何か食べるか? 」
「 うん!! 」

 それまで首にしがみついていたカツヤが勢い良く起き上がり顔と顔が見合わせるような体制で満面の笑みを向けて答えれば、スコールの鋼鉄のような頬の筋肉でさえすこし表情が現れる。

 何が食べたい?と問えば、その笑みは崩れることなく「 おむれつ!! 」と元気の良い返事が返ってきた。

 しがみついていたカツヤは、料理の準備をするとわかったと同時に潔く降りた。

 今日はどうせ当番の日だったし、丁度いいなどと考えていたスコールは、カツヤの希望を叶えるべく卵を取り出した。

「 い〜ざすっすめ〜や〜きっちーん!め〜ざす〜は〜じゃーがーいっも〜!!! 」

 上機嫌に歌を口ずさむカツヤの歌をBGMに卵を溶かして味付けをしていく。しかしその歌ではコロッケができてしまう。

 料理をする自分の周りをうろちょろするカツヤに、そんなに悪い気はしないな、などと思っているスコールはコロッケが出来上がり、キャベツの存在を忘れていた所まで歌をしっかり聞き込んでしまった。

オレンジの花は
君のもの


(いったいこれは何だ)
(……只のオムレツじゃないか)
(オムレツ型のケーキなんて初めて…)
(ティナ、無理しなくていいんだよ?)
(僕、作りますね。本物の。)
(カツヤ、食べるんじゃない)
(うう、おむれつ…)


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