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レグルスの王冠をあなたに ver2
「強い人が好きだよ」

毎度おなじみライブラ本部。
杏樹は自分と同様にソファに座る人物へ言葉を返す。

「へえ〜」

銀髪チンピラ猿ことザップである。

ちなみにレオナルドとツェッドは出かけていてこの場にはいない。
実のところ、ツェッドも加えて三人で昼食を食べに行きたくなかったザップが、例のごとく駄々をこね、置いて行かれただけだったのだが、まあそれについては割愛する。

「具体的にはどんな?」

訊きながら、ザップがポケットから葉巻を出そうとしたのですかさず叩き落とし、杏樹は口を開いた。

「えっとね、まず背が高くて、」
「おう」
「それから真面目で優しくて、」
「おー」
「あと植物が好きで、」
「……ん、」
「体格はがっしりしてて髪は赤くて、」
「…………んん??」
「ブレングリード「いやいや待てって、それに当てはまるの一人しかいねーじゃねえか!」そうだね」
「『そうだね』じゃねえよ! 見てみろ! なんかよくわかんねえけど番頭が賢者モードになっちまってんだろ!」

少し離れた位置。見ると、自分のデスクで簡単な書類整理中だったはずのスティーブンが、いわゆるゲンドウポーズをとって深刻そうな空気を背負い沈黙していた。

「あのねえ、ザップ? わたし、『恋愛感情で好きな人』って言ったっけ?」
「あ゛?」

ザップが眉根を寄せて停止した。

「ふふ」
「てめえ、はめやがったな……」
「やだなーいつわたしがカワイイ後輩をはめたって〜?」
「寝言は寝て言えクソ女! 俺のこといつもSS呼ばわりしてんじゃねえか!」
「え? 何ザップ? 猿って人語話すの?」
「〜〜〜ッ!!」


「……二人とも、そのあたりにしないか」

件の『当てはまる人物』であるクラウスは、先ほどまでデスクトップパソコンに向かいプロスフェアーをしていたが、ひと段落したらしく立ち上がる。

「旦那ぁ〜」

ザップが情けない声を出す。近くまで歩み寄ってきたクラウスに、杏樹は口を開いた。

「今日もかっこういいね」
「ヒッ」

背後から絶対零度の空気が急激に迫り、ザップは青ざめた様子で悲鳴を上げた。
一方『こういう事』に鈍感なクラウスはそれには気づかず「……そんなことはないが。そうだな、礼は言っておこう」と口の端を緩めた。

意図的にこの面白い光景を作り出した杏樹は、心の中でひとしきり笑ってから、こんなふうに馬鹿をやれる平和のありがたさをしみじみ噛みしめる。
あとでスティーブンを慰めてあげよう。ザップは論外だが。そうそっと思いながら。


▼ 大幅に書き直しする時間的余裕がなかったので、タイトルリンク前半部のものと、あまり変わっていません。申し訳ないです。とりあえず暫定として。
  また後日書き直す予定です。
  2015/06/15(2015/07/07up,2015/07/13move,2015/07/16加筆修正)

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