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誰でもなくあなたなのだから
ライブラ本部に着くと、レオナルドがすでに来ていた。「おはよー」「おはようございます」レオの話によると、いつも植物を愛でるかヤマカワさんとプロスフェアー対戦に勤しむクラウスは、別件で部屋を開けているらしい。ギルベルトさんもそれに同行したようだ。書類整理に忙殺されているスティーブンは、さすがに徹夜が五日続いたあたりで限界がきて、先ほどレオがコーヒーを持って行ったところ寝落ちしていたとのこと。気配を感じられないため、チェインも出払っているのだろう。――え?ザップ? あの猿の出勤が遅いのは普段通りのことなので、いちいち気にしていては無駄だ。ソファに座ってソニックを戯れていたレオの隣に腰を下ろす。そして何気なく壁にかかったカレンダーに目が移り、そういえば、と思う。「レオ」「はい?」こてんと首を傾げる仕草が可愛くて、彼は本当に男子なのかと疑いたくなる。緩みそうになった口元に目敏く気づかれ「杏樹さん、失礼なこと考えてません?」と指摘される。「あはは、そんなことないって〜」適当に誤魔化しつつ、本題。「ライブラに入ってしばらく経ったけど、どう? 慣れた?」問いかけに対し、レオはああ、と声を上げる。「そういえば今日で一か月でしたっけ」視線は先ほど杏樹が見ていたカレンダーに向けられていた。「……そうですね、最初はこんな目でも役に立つのか半信半疑で。みなさん血を操るすごい力を持ってるのに、貧弱な僕が力になれるのかって」「うん」「でも、最近はちゃんと役に立ててるんだなあって思えるようになってきました」へへ、と頬をかく。話の内容を理解しているのかどうか不明だが、ソニックがレオのひざの上でそのつぶらな瞳で彼を見つめていた。「レオは十分ライブラに貢献してくれてるよ。もうレオなしじゃだめなくらい」微笑んで、レオの柔らかなくせ毛を撫でる。彼は気恥ずかしそうに身じろぎする。「だけどね、レオがライブラにとって欠かせない存在である理由は、その目だけじゃないってことは覚えておいて」「『神々の義眼』だけが全て、って思われてるみたいで、少し悲しいな」眉尻を下げると、見る間にレオは慌て始めた。「えっ、あの、そう思ってるわけじゃ……! いや、でもそうなのかも……なんかよくわからなくて……えっと、とっとりあえずごめんなさい?!」「カワイイなあ」おっと。つい本音が。「ま、まさかからかったんですか?!!」涙目を向けられると、相手がレオだからか、何かイケナイことをしているような罪悪感を感じてしまう。「ごめんごめん、そういうつもりはなかったんだけど」苦笑して言葉をつづけた。「『神々の義眼』を持っているのがレオだったから”じゃなくて、“レオが『神々の義眼』を持ってたから”、わたしたちは君をライブラに迎えたのだし、なくてはならない大切な存在だって思ってるんだよ」レオはその瞳を大きく見開いた。青き輝きがこぼれた。「クラウス風に言うなら――『君が諦めきれずにそこに立っていたから』かな?」ソニックをぎゅっと抱きしめて、レオは口をぱくぱくと動かした。開かれたままの目はとても綺麗で、まるで宝石のようだった。でも、それはレオの目だからそう感じたのであって。たとえ彼の目が神々の義眼でなくて、ライブラの一員でもなかったとしても、きっと自分は今このときと同じことを感じていたに違いない。


▼ ツェッドはまだライブラ加入前ということで……;;
  2015/06/12(2015/06/30move)

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