B3→total reflection | ナノ


エンドロールが見当たらない
※三人称視点っぽい


色々ぐだぐだ悩んでいたけど、いざ会ってみればこれがすんなりいくもので。昨日のあれはものの見事に杞憂だったなあと、己の神経の図太さに感服する。
乙女心と秋の空、という日本のことわざがあるが、あながち間違ってもいない。

――それ以前に、杏樹の場合は、泣いて悩んで落ち込んで、それで世界が救えるわけでもないと理解しているため、ナイーブになっている余裕もないのだ。





先日のように敵意を向けられれば、自分だってどうなってしまうか想像がつかない。
しかし「いい子」にしている限り、スティーブンが表面上は普段通りを装ってくれるから――ザップは何か感づいているとは思うが――周囲は何も気づかない。

スティーブンはライブラのブレーンであるし、頭がキレる分、杏樹が抜けた際の損失の大きさも理解している。
杏樹自身も、その立場上ライブラを抜けるわけにはいかない。加えて、まだスティーブンが自分のことを「妹」としてでも愛してくれるなら、それが彼の計算の上の台詞であっても、抜ける気はなかった。

「はい、これできた分の書類」
「ああ、ありがとう」

二人きりの本部。

以前と同じシチュエーションだが、かといって、互いにあの日の出来事を蒸し返そうとはしない。むしろほんの少し、他人行儀ですらある。

杏樹は恋慕を氷に固めて、なかったことにして、出会ったときと変わらずスティーブンを兄として慕った。
それはすべて、無理に恋情を勝ち取ろうとして、彼の境界線を越え、本当に嫌われてしまうという最悪の事態の回避に帰結する。

一方のスティーブンは、ああ言えば杏樹が自らの心を律すると知っていたから、わざと突き放した。自分では彼女を一番にしてあげることはできないし、将来のまぶしい彼女を傍に繋ぎ止めておくのはとんだ傲慢だと思った。
今それが杏樹にとって苦しい状況でも、数年経てばあたりまえになって、そのうち相応しい男と結婚するのだろう。

――“という良き兄の仮面を被っていただけ”だった。


ライブラメンバーとしては一番下っ端だが、実はとんでもなく肝が据わっているレオナルド・ウォッチに言わせれば「なにこれ両方めんどくせえ」の一言に尽きる現状であったが、当のレオナルドが全く気付いていないのだから、どうにもならない。

兎にも角にも、微妙にすれ違い歪曲した愛で結ばれた二人の関係は、それこそフェムトやアリギュラあたりの仕業でトンデモな場所に放り込まれないと解決のしようがないらしい。


▼ ここで終わりたい方は読むのをやめてもらっても大丈夫です。次の話〜ラストの「曇りガラス越しのさよなら」までは、スティーブンと結ばれるパターンのENDになります。
  2015/07/20(2017/04/12up)

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