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悪魔さえも見てくれない
それでも独りでいるのは悲しくて、寂しくて。わざと生存率の低い裏路地を通りながら、適当に因縁つけて襲い掛かってくる異界人たちを蹴散らす。単なる八つ当たりだった。こんな自殺行為をしていれば、誰かが気づいてこの手を引っ張り上げてくれるかな、なんて。ゼロに等しい期待を抱いて、それで自分を掬い上げてくれるかもしれないその該当人物は、脳裏に浮かんだクズなんだから、矛盾しすぎて全く笑えない。

人形か機械のように殺戮を繰り返す。

クラウスにばれたらやばいなあと思うも、実際のところ本心ではそんな心配欠片もしていない自分がそこにいた。どうせスティーブンが後処理をしてくれるのだ。

どうでもいいときには傍にいるのに、肝心なときは来てくれない。世界は優しくできていないのだから、当たり前か。そして当然のように救いを望む自分も、とんだ馬鹿野郎だ。長い人生の中で何度も失恋を経験した。今回もその中のなんでもない一つの出来事になるだけだ。だから全然悲しくない。辛くない。苦しくもない。心だって痛くない。ねえ、そうでしょう?

気づいたときにはもう夜中だった。いつから自分が大鎌を振り回していたのか覚えていない。遠くでパトカーのサイレンが鳴っている。路地を一つ挟んだところでは、怒号と銃声が聞こえる。
ぼんやりとした頭であたりを見回す。

狭い裏通り。
両側の壁は血塗れだった。

緩慢とした動作で己の姿を見下ろせば、どこもかしこも赤い色がこびりついていた。
髪を引っ張る。いつか彼が綺麗だと褒めてくれた金髪も、今や血で凝り固まっている。
こんな無様な姿を見れば、彼はどんな顔をするだろうか。いいや。考えるだけ無駄だ。

「――おい!」

やけに切迫した声が背中に届く。
おもむろに振り返れば、そこには待ち望んだクソ野郎がいた。ああ、全く笑えない。


▼ 2015/07/20(2016/12/20up)

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