光りアンサンブル 休日もライブラ事務所で仕事をしているスティーブンのために、少し遅い昼食を買いにSUBWAYに行ったその帰り道。とある公園を通りかかると、離れたところから子どもたちの歓声が聞こえてきた。 何気なくそちらに目を向ける。 遠目だったが見覚えのある顔が確認できた。 せっかく見かけたのだから、このままスルーするのも変かな、と思いつつ、彼――ツェッドの元へ向かう。 近づくにつれ、彼の周りには何か白いものがたくさん、ひらひらと飛んでいるのがわかった。 蝶だ。 だが本物ではない。 一見するに紙でつくられているようだ。 杏樹は少し距離をおいて立ち止まる。太陽の光が蝶たちの縁をまばゆく輝かせた。 あまたの蝶が舞う光景を眺めていると、ふと、ひとつ目の前にやってきた蝶があった。 人差し指を立てれば、ひらひら飛んで指に止まる。斗流血法はこんな繊細な操作もできる術なのか。あたりを見回すも、しかしほかの蝶はただ羽ばたいているだけだ。 この蝶だけが、まるで意志を持っているかのように動いていた。 杏樹は思わずツェッドを見た。 離れたところにいる二人の視線が交わる。 ツェッドは杏樹にだけわかるように、ほんのわずかに微笑んでみせた。 ▼ 2015/07/02(2015/11/01up,2016/02/20move) ←back |