あなたに願う静寂 レオナルド、ザップ、ツェッド。この三人が揃うとただで済まないお昼時。 「食神様も言ってますし、もうフツーに食べましょ? ね??」 ヘルサレムズ・ロットの街角で。 レオナルドがくの字に体をまげ、おなかを押さえて切実に訴えた。 ついこの間にも昼食をどこで食べるかもめにもめ、ついには6時間以上も食事にありつけなかったことがあったのだが、彼らは(といううよりはザップが)懲りていないらしい。 「わたしもうお腹と背中がくっつきそうなんだけど……」 そして今日はそこに杏樹がいた。 普段はスティーブンと食べるか一人でふらっと出ていくので、珍しい。 げんなりとした表情で、レオナルドと同じようにお腹を押さえて擦っている杏樹に対し、ザップは片眉を上げる。 「貧弱だなあお前、それでもライブラの女かよ。ちったあ辛抱しろ」 「はあ?! じゃあニーカはどうなるのよ!」 「あいつあれでパトリックが仕入れた大型武器もぶんぶん振り回してるぞ」 「えっわたし見たことないんだけど……」 「ハッ信用されてねえんだな、ざまあ」 「うっニーカ……わたしの友よさらば……」 とんだ茶番を繰り広げてしまうのは、生命維持に必要な欲求の一つ、食欲が満たされないせいであろうか。ああ、そうに違いない。 杏樹は呆れた視線を寄越すレオとツェッドを受け流す。 「もう前みたいにダイナーでいいんじゃないですか」 ツェッドの提案は、どこか諦念と失望が滲んでいる気がしたが、それは全く気のせいではない。 そして一行は、以前と同様の流れでレオの行きつけの店、ダイアンズダイナーに赴き、以前と同様の流れで世界の命運をかけた事件に巻き込まれ、再び昼食をくいっぱぐれることになったのだった。 ▼ 2015/07/02(2015/09/30up,2015/11/01move) ←back |