心の接続 ver2 任務が夜中まで続いて、家まで帰るのが面倒くさかったから、たまたま近かったザップの家に寄って、口を物理で黙らせてお風呂に入って一つのベッドで寝た。* 小鳥のさえずりとともに、目を覚ます。 ブラインドから差し込む朝日が眩しい。 のろのろと体を起こすと、キャミソールの肩が片方落ちた。 腕を上げて直す気力も起きず、意識が覚醒するまでしばらくそのままでいる。それが常だった。しかし今日は違う。 「……んあ」 タオルケットが持ち上がったからだろうか、ザップが起きた。 「はよ、」 しかし、彼は少し気まずそうな顔をする。 杏樹はその理由にああ、と合点がいったが、ザップ自身は特に触れるつもりはないらしく、がしがしと頭を掻きながら起き上がって、枕元の葉巻に手を伸ばした。 相変わらず就寝スタイルがパンツ一丁なのは、今更だしツッコまない。 「朝から煙草吸うのやめてくれない?」 言いながらじと目を向ける。 「ああ゛? ここ俺ん家だし、俺の勝手だろ」 実のところ葉巻や煙草の類が好きではない杏樹だったが、ザップのいうことも尤もだ。 眉根を寄せたまま口を結んだ。 「ハア〜そんな顔すんじゃねえよ、萎えるだろ」「何が」「ナニが」「死ね変態!!!」 手元にあった枕をひっつかんで、ザップの顔に押し付けた。 幸いにも葉巻にはまだ火がついていなかったため、火傷はしなかったようだ。ちくしょう運のいい奴め。 枕の向こうのザップがふごふごと訴えており、そういえば口も鼻も全力で塞いでいたと気づいた杏樹は、数分経ってようやく枕を退けた。 「ゲホゲホッ、お前、本気で殺す気か!」「半分本気だった」「そうかよ!」「ザップが朝から下ネタ言ったのが悪い」「それ言うんなら、お前なんでここに来たんだよ」「近かったし、ザップは男として見れないから」「」 隣でザップが頭を抱えているが、正直知ったことではない。 「……今日みたいなこと、ほかのやつにはすんじゃねえぞ」 しばらくしてから、ぼそりとザップが呟く。 え、と聞き返すと「だから!深夜に!突然やってきて!んな格好で男と一緒のベッドにホイホイ寝るんじゃねえ!って!言ってんだよ!」と怒鳴られる。 普段の雰囲気とは似合わず、ひどく真剣な様子を前に、逆に杏樹はきょとんと目を瞬いた。 「ンン、思春期かなお猿さん???」と煽ろうとしていたところだったが、そんな自分は棚に上げた。 「……ごめん?」 「なんか信用ならねえ」 「じゃあなんて言えばいいのよクソ猿」 「知らねえ」 ザップが今度こそ葉巻をふかしはじめた。 白い煙がぼやぼやと広がっていく。 「……まあSSが言ってることくらい、わかってるけどね」 「わかってたのかよ!」 青筋を浮かせてザップがこちらを振り向く。同時に、煙がぶわっと眼前に吹き付けられる。 「煙たい!くさい!このアホ猿!!」 ザップと睨み合って、数秒。 そのあと、はあ、とため息をつき、先ほどの言葉を続けた。 「――安心してよ、ザップだけだから」 ふい、と顔をそらす。 なんだかまともに目を合わせたら、変な気持ちになりそうだったから。柄じゃないこと言ったからか、少し頬が熱い。 「……あ、そ」 想像してたより素っ気ない。別に、ちゃんとした返事を期待してたわけではなかったけど、あまりにもの味気無さに腹が立つ。 むっとして声を上げようと口を開き、勢いよくザップを見た。 「……え、うわ、」 そっぽ向いてる耳まで真っ赤。 「こっち見んな」 そんなこと言われたら、逆にこっちが恥ずかしくなる。 「ザップのばーか」 心のざわめきを誤魔化すように口にしても、傍らから反応はない。 代わりにピチチッと、窓の向こうにいたらしい小鳥が、可愛い鳴き声を返してくれた。 ▼ 夢主がだらしない所を見せられるのはザップにだけだし、男として完全に意識をしてないわけではないけど(でもほとんど兄弟のようにしか思っていない)、ザップは自分に手を出すことはないと信頼している夢主 2015/06/18(2015/09/05up,2015/09/30move) ←back |