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ワンス モア シャイニング
病院に見舞いに来ていたら、ホワイトに突然「映画見に行きましょうよ!」と言われた。これがレオやクラウスなら、二つ返事でOKしていたかもしれないが、相手は病人である。

本来は外出届を出すはずだが、彼女の場合心臓に重い病気を抱えており、その許可もでないだろう。そして、ホワイトがまさかそういう――外出届を出してほしいという――意味で「映画を見に行こう」と言っているわけではないのだ。

杏樹が何と返すべきか考えあぐねていると「ね? いいでしょ? 二人でこっそり行けばバレないわよ!」。上目づかいでおねだりされれば、男でなくとも弱る。「……そうだね、ちょっとだけ、だからね」「やった!」とまあ最終的にはこんなふうに許してしまうんだけど。

ホワイトは病人ではあるが、ブラックの話では一分一秒を争う重篤患者なわけではないそうだから、たぶん、大丈夫だ。
ホワイトだって、自分の体調のことは自分で一番わかっているだろうし。





そうして、二人で病院を抜け出して、赤のランブレッタで夜の街を駆けた。

野外広場で見た映画は、成り行きでクリスマスの家族旅行に行かず家に残った男の子が、やってきた泥棒たちをいたずらで撃退するというハートフルなコメディ作品だった。大崩落以前の時代にヒットした映画である。

杏樹はホワイトと並んで、懐かしい気持ちでスクリーンを眺めていた。ちょうどギャグシーンに差し掛かる。泥棒が幼い少年の策にまんまと引っかかる、その泥棒の間抜けな姿に、杏樹はぷっと噴き出した。
隣をちらと見てみると、ホワイトも腹を抱えて大爆笑していた。目じりに涙すら浮かんでいる。

柔らかい夜の闇に、煌々と輝く映像が、まるでフィルムのように、彼女の翠蘭の瞳に映し出される。ホワイトと目が合う。その瞳に今度は自分が映る。「この映画、とっても面白いわね!」と小声で言って、ホワイトがにっ、と無邪気に笑う。その笑みが、なぜかやけに貴く思えた。


▼ 今回はわりと描写が多いので、ひとつのみアップ。そのままの流れで読んでほしいところは詰んだ文章に、少し間を空けて読んでほしいところは改行しています。
  結局うまい具合にまとまる終わり方が思いつかずに、拍手連載としてアップしていたときのままとなってしまいました。ちなみに二人が見た映画はホー/ム/アロ/ーンです。
  2015/07/19(2015/07/20up,2015/07/25move)

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