B3→total reflection | ナノ


捧げたさいご
眠る愛し子に、額に触れるだけの口付けを。そのあと、スティーブンは彼女の絹の如き金色の髪を撫でる。安らかにベッドの中で青い双眸を閉ざし、わずかに胸を上下させる姿を眺めていると、常に何かと忙しく余裕のない心が落ち着いていくのを感じた。決して近くない距離ではない。たった20センチだ。情欲すら湧いてこないこの感覚は、信仰にすら似ていた。「……なあ、杏樹。お前は俺を、赦してくれるか」答えが返ってこないことを期待して、あえて尋ねる自分はなんと卑怯か。「はは」自嘲が漏れるのも、仕方のないことだ。憂うわけでも悔やむわけでもないが、こんな人間に立派に育ってしまったわけだから。大事なものを、たったひとつ以外、すべて捨てられる。その「たったひとつ」のためなら、なんだってする。そして、己の言う「たったひとつ」は――。「でもきっと、なんだかんだ言って赦してくれるんだよなあ。だから、本当に、」申し訳なくて。けれど、この想いをやめられない。絶対に言葉にはしない代わりに、スティーブンはもう一度、最後に優しく杏樹の頭を撫でた。


▼ 絶対に夢主がスティーブンの中の一番になれない(ならない)ことを、彼自身も夢主も解っているという話。
  2015/07/02(2015/07/13up,2015/07/20move)

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