無情すぎた鉄の嵐 ――潜水艦イ400並びに402。彼女たちは霧の艦隊所属の、イ401の姉妹である。 タカオの奮闘の甲斐あって、千早群像、イオナ両名の救出に成功。しかし一難去ってまた一難。タカオと融合し、アルスノヴァモードでアメリカを目指し航行するイ401の後方には、ぴたりと姉妹艦がついていた。 * このままでは二隻の潜水艦を引き連れたままアメリカに到着してしまうと危惧した群像は、戦闘態勢に入ることを宣言する。もちろん、勝機があると言われてしまえば、敵艦を倒すことに反論の声を上げるものはいなかった。ただ、イオナを除いては。 侵蝕魚雷により沈んでゆく二隻を、概念伝達で薄薄と感じ取っているらしいイオナは、俯きがちに必死に耐えているようだった。彼女がイ400と402を撃沈させたくないと思っていたことに関して、杏樹は確かに気づいていた。 しかし杏樹の力では、二隻を沈めずに丸く収まる方法が思いつかなかった。群像とイオナを捜索していたとき感じたものと似た無力感を覚える。もう少し時間があれば、イ400や402とわかりあえることができていて、戦わずに済んだかもしれない。今ではもう役に立たない可能性に考えを巡らせた。 杏樹は艦が安定航行に入ったことを確認して席を立ち、イオナの傍へと歩いた。そうしてそっと彼女の柔い身体を抱きしめた。 「ごめんなさい、イオナ」 クルー全員の安全を確保し、確実に勝利を狙える作戦を立てなければならない立場にいるからこそ、イオナだけの願いをきくことはできなかった。それは事実であるが、杏樹にしてみれば言い訳にすぎない。本当は謝る資格などないけれど、それでも。 艦内はしばし静寂に満ち、イオナの真の思いに気づかなかった者も、ここでようやく思い至り、申し訳なさげに視線を俯けたのが気配でわかった。 「ううん、大丈夫。私は群像と杏樹の船だから」 消え入りそうに微笑むイオナに、再びごめんなさい、と呟いた。 あなたは船。でもそれだけではない。杏樹はそう伝えたかったが、うまく言葉にならずに心の底に沈んだ。 ▼ シリアスターン全開ですみません……;; 2014/04/04(2014/06/29up) ←back |