夢と希望でおいくら
四日前に真昼ちゃんが死んで、ペコちゃんが実質的に九頭龍くんを庇ってクロとしてオシオキを受けた。
十神くんや花村くんを含む四人を弔いながらも、皮肉なことに狛枝の言うようにその死を乗り越えて、みんな前へ進みつつあった。そんな朝のことだった。





「…………何この状況」

いつものように自分のコテージで目を覚まし、いつものようにレストランへ行った。そのはずだった。

それなのに目の前にはあることないことを機関銃のように言葉でまき散らす狛枝と、昨夜終里ちゃんの身代わりになってモノクマに瀕死の重傷を負わされた弐大くんの名前を呟きながら号泣する終里ちゃんと、妙にビシビシした警官みたいな超真面目な言動をする唯吹ちゃんと、そのだれおま状態の三人におろおろしている日向くんがいた。癒しだった。

「いやそうじゃなくてこいつらどうにかしてくれ!」

どうやら心が読まれてしまったみたいだ。さすが日向くん。超高校級の読唇術遣いだね☆

「おいおい……波崎までおかしくなったのか…? 大丈夫か? 熱でもあるか?」

「あははごめんごめん。わたしは大丈夫だよ。あまりにも日向くんが癒しだったから……つい」

えへへと笑うと彼は脱力した様子で重い溜息をついた。
そうこうするうちに、まだレストランに来ていなかった残りのメンバーが揃う。

そして例によって唐突に出てきたモノクマ曰く、この三人は『絶望病』という病気にかかっており、今回の動機だということだった。
絶望病は発熱があり、伝染し、人にとって症状が異なる病気らしい。
これが蔓延すると、我を失って容易にコロシアイが起こりそうだ。たかが病気と言っていられない。

罹患した三人には申し訳ないが、三番目の島の病院に入院してもらうことに決まった。





かくいうわたしはどんな流れか狛枝を運ぶのを手伝ったわけだが、体の調子がどうかを尋ねたところ「うっとうしいなあ。話しかけないでくれる? キミみたいな人、嫌いなんだよね」と一刀両断された。
そんなふうに問答無用で有無を言わせず理不尽に一蹴されて、わたしも頭に血が上り「あっそ。じゃあもう話しかけないよ。勝手にその病気で死んでれば?」と売り言葉に買い言葉を返したのだった。

そういうわけでわたしは今モーテルに泊っている。
さっき行われた左右田くんが改造したカメラの通信によると、狛枝は現在予断を許さない状況にあるようだったが、あんな奴さっさとくたばってしまえばいいとさえ思う。

昼間のあの拒絶以降、なぜか苛々して落ち着かない。
狛枝の言葉が絶望病の彼の症状である『嘘吐き』によるものだと理解した今でも、苛立ちは消えなかった。
今まで「杏樹さん、杏樹さん」とうるさいくらいに話しかけていたのはそっちだろうと、ぶつくさ文句を垂れ流しながら、その日はそのままベッドに倒れ込んだ。





二日後。

モノクマのチートっぷりが発揮され一瞬で病床から復活した狛枝が、日向くんから病気時の言動を知らされたようで「ええっ! ボクそんなこと言ってたの?! しかもあの杏樹さんに?!」と大そう顔を真っ青にしてこちらを伺っていたが、断固としてわたしが口を利かなかったのはのちに有名な話となった。


▼ 次の話から急展開しますのでご注意を。
  2013/07/26(2013/08/04up)
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