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罪なきその手にどうか救いを
リヴァイが「死なない」のではなく、「死ねない」のだと。
気づいたころには何もかも遅かった気がする。
すでにリヴァイは人類最強としての才覚を発揮し始めていたし、わたしはわたしで『戦場の天使』だとか『世界最強』だとか、くだらない別称を名づけられていた。

わたしには『死神』の方がよく似合う。
『戦場の死神』こそ、わたしに相応しい二つ名だ。


日常生活ではともあれ、戦場においてはリヴァイのように優しくない。
庇っていては任務に支障が出ると判断すればすぐに捨てる。
堕ちていった仲間を看取る瞬間すら存在しない。
そんなことをしていては、今度は自分が巨人の餌食になるからだ。
そんな非情なわたしを、以前『悪魔』だと言った同期がいたが、それも尤もであると思う。

リヴァイはほんの少しの温情を、戦場でも忘れない。
わたしよりかなり優しい部類だと勝手に思っている。
一度素直に口に出したことがあったが、そのときは弁慶の泣き所を全力で蹴られた。

彼は死んでいった仲間を背負っていく。
物理的な意味ではない。精神的な意味でのことだ。
だからだんだんと、「死ねなく」なっていった。





口が悪くて目つきも悪くて、どれだけ潔癖症で厳格でも、彼はとても優しいひとだったから。多くの死を背負ってしまった彼に気づいたとき、わたしは誰よりも自身を責めた。
仲間の死に疲れて、感情を殺すようになったわたしとは違って、彼はずっとその感情と向き合って、今までもこれからも共に生きていくつもりなのだ。
それすらも理解してしまったとき、わたしは自分が塵よりも矮小で卑怯な人間であると悟った。

殺して、と啼泣ながらに懇願したわたしに、彼は淡々と生きろと返した。
軽蔑するでも、嫌悪するでもない、何の感情も浮かばない瞳に晒されて、わたしはそれにひどく恐怖した。初めて彼に恐怖した。

「俺の背負う分を分けてやる。だから生きろ」

その言葉をきいて、わたしは彼に畏怖を抱いた。
ただ単なる恐怖ではなく、尊敬と敬愛の混ざったそれを抱いた。

こんな最低の人間にも、彼は慈悲を与えてくれるのだ。
彼の優しさを痛いほどに理解すると同時に、わたしは「死ねない」彼のために生きたいと願った。
そうしてあの日。頷いたわたしの迷いのない瞳を見て、「いい目だ」とリヴァイは口角を上げた。


( 罪なきその手にどうか救いを )


▼ 人類のために戦っていた夢主が、リヴァイのために戦う覚悟をした瞬間。でもそれは心臓と捧げることと同義ではありませんが;;
  2013/04/28(2013/09/26up)
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