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きもちのいいことをしよう
※ちょっと大人向けの話かも


調査兵団兵士長、リヴァイ。
わたしの恋人。

しかしわたしは、彼に愛を呟いたことも、囁いたことも、ない。

じゃあどうやって『恋人』という枠に落ち着いたのかときかれれば、わたしたちはきっと揃ってこう答えるだろう。「そんなことどうだっていいのだ」。

恐れ慄くほど重症な潔癖症の持ち主で、自他ともに厳格な上口が悪く、目つきも悪い。そんな人類最強は、わたしの前では一人のひとだった。
わたしの何がそうさせたのか、わたしにもわからないけれど、彼はわたしにはひどく優しかった。
わたしも、彼の隣にいることを心地よく思っていたし、この世界ではこれ以上ないくらい幸せだった。
次の瞬間には巨人が襲ってくるかもしれない現状なんて、まるで嘘だと思えるほどには、二人きりの時間はとても穏やかだった。わたしたちはその短い時間を大切に、大切に、生きていた。





体を重ねることは、世間一般でいう『恋人』と比べるとほとんどしない。
別にお互いが禁欲主義者というわけではなかったし、はっきりした理由は思いつかない。
ただきっと、わたしとリヴァイの間には、体以外の確固たるもので結ばれているというしかし漠然とした意識があったのだと思う。
威信か、信念か、それ以外の何かか。
それでも数少ないながら、お互いを求める刹那というものはあった。





愛を紡がないわたしに、リヴァイは終始不機嫌そうにわたしを抱いた。
その感情のままに荒く、掻き抱いた夜もあれば、
こちらが不安になるくらい優しく抱いた夜もあった。
大抵どんな夜でも、わたしを抱くとき、彼は普段の比じゃないくらい欲情に塗れた瞳をする。
おそらく、体を繋げることで彼の中のスイッチが入ってしまうのではないかとわたしは思っている。
そうしてそんな強く鋭い瞳を真っ直ぐに向けて、リヴァイは「愛している」と何度も口にする。
一生分、いや、それ以上の愛情をわたしに注ぐ。
それは、いつ死ぬかわからない自身がいなくなったときのためだろうか。
その猛る熱にあてられて、思わずリヴァイの零した言葉がそっくりそのまま出そうになる。
そうするとわたしは決まって、与えられる快楽をやり過ごすかのように眉根をきゅっと寄せて、一度口を噤むのだ。もちろん、そんなわたしに気づいているリヴァイの機嫌は急降下して、行き場のない怒りにも似た感情をぶつけるように、唇に噛み付く。すべてを貪る激しく執着的なキスを受けて、理性を失いつつある霞んだ頭の中で、わたしはいつも懸命に浮かぶ愛の言葉を掻き消していく。

朝、愛しむように額に口付けるリヴァイがいた。
窓から差し込む太陽の光を眩しく感じながら、ゆっくりとその瞳を開ける。
その存在を確かめるように彼の腕を捕まえてぽつりと謝罪する。
それももう半ば習慣化してきている儀式のようなもので。
リヴァイは眉間に皺を寄せながらも、普段通りの不機嫌な声で「ああ」と応える。
いつか、いつかわたしも、彼の思いに応えられるようになるだろうか。

ちくちくと胸を苛むこの痛みには、この先もきっと、慣れることはない。


( きもちのいいことをしよう )


▼ 名前変換がなくて申し訳ないです……。
  愛を口にすることをやめた夢主と、代わりに愛を呟くリヴァイ。
  2013/04/29(2013/05/19up)
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