03 天秤
※二章はじめの話
一年間、ずっと悩み続けていたのだろう。
彼女たちとともにここにいることは、彼にとってどれだけ幸せな理想だったか。
それでも彼女たちに笑顔を向ける度に、今も病気で苦しんでいる妹の姿が脳裏を過ぎり、胸の痛みを強くしていったのだろう。そうして、耐え切れなくなっただけなのだ。
*
一度ぽろりと妹マルーのことを耳にしていたわたしが、城を留守にしていたときに起こったフォイフォイの反逆行為。結局その事件の最初から最後までわたしは彼の顔を見ることができなかった。
帰ってきたころにはすでにヒメちゃんは失恋していてアルバやルキ、アレスさんたちが王宮兵士たちと低次元サッカーをしていた。数週間ぶりに見る面々が懐かしくて、フォイフォイの部屋の窓から目を細めた。口元を緩めるわたしに、ルドルフさんとフォイフォイの日記を抱きしめたヒメちゃんは首を傾げる。
なんでもないと微笑んで「ところで、」と話を切り出した。
「ヒメちゃんはこれからどうするの?」
わたしと同じ金髪碧眼の少女は、しかし、わたしと違ってとても強く美しいその少女は、確かな意志を青い瞳に浮かべた。
「追いかけてフォイフォイに協力するわ」
嘘のないまっすぐな視線だからこそ、彼女がテコでも動かないことがわかる。
これはもう、わたしたちの問題ではなかった。
彼女と彼だけの問題だった。
「頑張ってね」
「もちろん」
フォイフォイがいなくなって一番辛くて寂しいのはヒメちゃんのはずなのに、彼女は気丈にも向日葵のようないつもの明るい笑顔を浮かべてみせた。
*
拝啓、フォイフォイくん。
あんなに可愛い子を泣かせたんだから、帰ってきたら覚悟してよね。
わたしの全力で殴らせてもらうから。
▼ 2013/03/25(2013/03/27up)
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