02 絵本
比較的夜遅くまで起きているロスが、珍しくすぐにルキと並んで寝静まった、そんな星月夜のことだった。
「ボクが勇者の子孫って、いまだに信じられないよ……」
夕食を作るため兼明るさを確保するために焚いていた火の前に座っていた隣のアルバが、唐突に口を開いた。思わず彼を見ると、どこか遠くを見つめるその瞳には焚き火がちろちろと移ろっていた。
「うーん……。でもわたしは案外そうかもしれない、って思ってるよ?」
「ええ? ……じゃあ例えばどんなところが?」
無垢な目で尋ねられ、少し苦笑する。
そしてアルバの問いに答えるため、子供のころ読んだ勇者クレアシオンの絵本の記憶を思い出していると、なぜだかいつの間にか視線はロスにたどり着いていた。
「勇気があるところとか」
クレアシオンは魔王に決して臆しなかったし、アルバも相手がどんなに強くったって、そこに助けを求めている人がいたら勇気をもって迷うことなく助けるでしょう?
わたしの言葉に、アルバは「ボクそんなにできた人間じゃないよ! 買いかぶりすぎだって」とぶんぶん首を振った。
とはいえ、実際わたしはお世辞で言ったんじゃあない。本当にそう思ったのだ。
アルバは確かに戦いの強さの面では、クレアシオンに劣るかもしれない。でも、心の強さは負けてはいない。第一、日頃のあのロスのドSさに耐えることができているのだから相当だと思う。
本当に強い人は自分の強さを自覚していないというけれど、それは本当なのかもしれないと再びアルバをちらりと見ると、どうやら会話の隙間にアバラを擦っていたようでついうっかり盛大に笑ってしまった。
▼ わかりづらかったかもしれませんが、一応野宿してるシーンです。
2013/03/25(2013/03/27up)
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