17 空
ロスは、夕空が嫌いだと言う。
わたしはそれが理解できなかった。
「なんで?」
「なんで、ってそりゃあ……」
ロスは当たり前のようにその理由を口にしかけて、でもすぐに唇を閉じた。
彼の表情は、どこか戸惑っているようで、自分でも何を言おうとしていたのかわからなかったようだった。
どうしてかは自分でもさだかではないけれど、ふと刹那的に彼の言いたかった言葉がわかった気がした。
たぶん、自分の目の色だから。
わたしは空の青が好きだ。しかし自分の目の青色は好きじゃない。
空は澄んでいるけれど、その青を見ているとどれだけ自分が汚れているかを否がおうにも自覚してしまう。ロスがどうかはわからない。でも大体そんな感じかもしれない。
急に口を噤んだわたしたちに、前を歩いていたアルバが振り返る。
「ボクは好きだぞ、夕方の空」
「私もー!」
そしてルキも両手を挙げて跳ねた。
「「だってお前(ロスさん)の目の色だろ(だから)!」」
そうして二人揃って笑う。その笑顔はまるで大輪の花。夕日に照らされていっそう眩しく映った。
そっと隣のロスを見やると、嬉しさと照れくささと悔しさが混ざった奇妙な顔をしていた。思わず噴出すと「旅人さんの脛蹴り上げますよ」とカウントダウンされ始めたので「すんません!」と何度も平謝りして許してもらった。なんだかんだ言ってこの戦士さまは優しいのである。
――とにもかくにも。
「よかったね、ロス」
「……別によくありませんよ」
わたしももちろん、この素直じゃない戦士ロスの瞳の色をした夕空が大好きである。
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2013/03/24(2013/03/27up)
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