14 物語
※一章end
※原作改変あり
――ロスが、笑ってない。
アルバにも、わたしにも、餞別の言葉を送ったときにさえ、偽物の笑顔すら浮かべなかった。
はじめからわたしは、ロスがいつかいなくなってしまうかもしれないことを知っていた。
アルバが幼女(ルキ)の身ぐるみを剥いだ罪で捕えられて牢屋に入っていたとき、わたしは一人でルキの服を買いに行っていたわけだけれど、ちょうどその帰り、荒廃した大地に先に着いていたロスとルキに合流する直前、その二人がしていた話を聞いてしまった。
戦士ロスは、勇者クレアシオンだった。
まるでそんな雰囲気は一切なかった。そもそも勇者は、魔王と共に次元の狭間にいなければならない存在のはずだ。彼が現実世界にいるということは、勇者の力を使う予測不可能な事態が起きた場合、魔王が目覚める可能性があった。いや、『可能性』じゃあない。目覚めるんだ。
魔王が覚醒してしまうと、自分が再び封印しなければならない。また、あの狭間に戻って、一人ぼっちだ。
ロスはたぶん、全部わかっていたのだろう。
そのことも、またアルバやルキと旅をするこの日々が、自分の中でかけがえのないものになっていたことを。
だから、勇者の力を使うことを躊躇った。
あっけなく終わりを告げた戦いに、戸惑いの表情を浮かべる面々をぐるりと見やり、ロスの消えた場所に視線の焦点を合わせた。
ああ、もういないんだ。
その近くで、ロスのスカーフを握りしめて俯いているアルバがいた。どんな顔をしているのかはわからなかった。
――みんなわたしのせいだ。
ディツェンバーの怒りが、戦いの雰囲気を壊したアルバに向くことは予測していた。彼がどんな攻撃をしてくるのかはわからなかったけれど、とにかくアルバを守らなければという一心だった。まさかわたしの武器すらも斬りおとしてしまうほどの攻撃だなんて、一体誰が予想できただろう。
攻撃を受けた後のことをはっきりと覚えていない。でもわたしはあのとき一度死んだはずなのだ。
それなのにわたしはいま、生きている。生きてしまっている。
あれはロスの――勇者クレアシオンの仕業だとしか思えなかった。
あのとき確かに死んでいればロスはロスのまま、ずっと旅を続けていられたかもしれない。
わたしのせい。わたしのせいだった。
でも。
動きが緩慢な脳を無理やり動かして、鉛のような身体も無理やり引きずって。
彼がいなくなったことを受け入れたくない心を握りつぶして。
前へ、前だけへ進むことを考える。
クレアシオンじゃない。ロスをこの世界に連れ戻さなければ。
必ず、ロスに笑顔を浮かべさせてみせる。
そのために、これからのわたしは生きてゆく。
▼ なんかよくわからない話になった……
勢いで書くのはやっぱりだめですね;;
2013/03/23(2013/03/27up)
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