senyu→戦士と勇者と魔王と旅人 | ナノ
24 夜
※02絵本の読了後に読むことをおすすめします。


























































ある日の夜のことだった。
黒い灰を天へ捧げながら煌々と瞬く焚火を前に、アンジュとロスは並んで腰を下ろしていた。その炎の向こう側には、もうすっかり寝付いてしまったアルバとルキが、規則正しい寝息を立てていた。

そういや前に、アルバとも似たようなことがあったなあと、いつかの夜を思い出す。
あの夜は、珍しくアルバが悩みを相談してきたのだった。自分が勇者であることが信じられない、と。アンジュはそんな彼に対し、アルバはクレアシオンと同じで勇気がある人だから大丈夫だよと元気づけた。

「……旅人さん?」

遠い目をしていたことに気づいたのだろうか。ロスが首を傾げて尋ねてきた。アンジュは「大したことじゃないんだけどね」と思い出していた内容をロスに伝える。ロスは「また勇者さんはそんなことで……」と溜息をつく。アンジュはそれに「アルバは豆腐メンタルだからね」と一応フォローしておいた。





「それにしても……ロスにはとても夜が似合うね」

改めて夜空を見上げてみると、また星月夜だった。
変わらない夜の深い深い藍色は、隣のロスの髪とほとんど同じ色。その中に綺麗な赤い瞳だけが浮かびあがって星のように輝いていた。

「そうですか?」

ロスは首を傾げたが、しばらくアンジュをじっと見つめてから、ゆっくりと口を開いた。

「なら、旅人さんには青空が似合います」

そう微笑むロスに瞳を向けるのが照れくさくて、視線を焚火にずらす。けれどそのちろちろと揺れる炎すらロスの赤い瞳に重なって見えて、逃げる場所を求めてふらふらと視線が彷徨った。そんなアンジュの様子にロスはくすくすと笑みを零す。

「旅人さんは本当に照れ屋さんなんですね」
「うっうるさい!」

聞き捨てならない言葉を耳にして咄嗟にロスへ顔が向く。ルビーのように美しい目とぶつかって、アンジュは思わず息を呑む。ロスがそのまま視線を逸らしてくれないので、アンジュも縫いとめられたように逸らすことができず、じわじわと顔に熱が集まっていくのがわかった。

「じゃ、じゃあ! アルバは夜明けが似合うよね!」

なんとかロスの視線から逃れたいという一心で、かなり苦しい話題回帰に試みる。ロスはアンジュの言葉に隠された意図を理解したらしく「そうですね。とてもぴったりです」と苦笑気味に応えた。このロスの反応が自分から子どもっぽさが抜けないことに由来するものだとはっきり感じられて、恥ずかしく思う。無意識に俯きがちになってアンジュの視線が逸れる。しかしロスはそんな様子すら、どこか愛おしそうに見つめていた。
優しく深い色が二人を包む、そんな星月夜。


▼ この話は意外と難産だったので、物語を無理やり締めた感満載ですね;;
  2013/12/15(2013/12/22up)
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