senyu→戦士と勇者と魔王と旅人 | ナノ
06 手
――ふと思うことがある。

「ロスの手ってすごくごつごつしてるよね」





以前アルバが苦戦していた首ながスライムを相手取った戦闘をなんなく快勝したロスに呟くと、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で静止した。しかし一瞬のうちに復活して、

「そりゃあオレだって男ですし当たり前でしょう」

と哀れなものを見るような瞳を向けられた。甚だ心外だ!

「いやいや、アルバの手を見てみなよ! 細いよ! 細すぎるよ?!」

「勇者さんは別です」

「え? 男じゃないって?」

「そうです」

真顔でそう言われたらついつい信じてしまいそうな冗談だった。
ロスに散々言われているのもつゆ知らず、少し離れたところでスライム相手に悪戦苦闘しているアルバを心底同情の目で見つめた。

「……でもいいなあ、強そうに見えるし」
わたしの手なんて細っこいし、自分で言うのもなんだけどすぐに折れちゃいそうからやなんだよね。

ひらひらと自分の手を振る。
ロスはぱしぱしとその赤い瞳を瞬いた。

「オレは綺麗だと思いますよ」

「…………」

思わぬロスデレに今度はわたしが目をぱちくりさせる番だった。
遠くで瀕死状態になりながらもようやくスライムを倒したアルバが、今に死にそうな表情でこちらへ向かってくる。傍らにはルキもいて、その様子を不安げに伺っている。

「その台詞、アルバにそっくりそのまま言ってあげたらどうかな」

「勇者さんの手は旅人さんとはまた違いますから」

それは一体どういう意味だい……。
そんな何か言いたげなわたしの視線に気づいているにも関わらず、ロスはいつも通りの感情の読めない顔のままずかずかとアルバに近づいていき、問答無用でそのアバラにアッパーを見舞った。
……アルバ。本当にご愁傷さま。


▼ その後はもちろんロスがアルバの怪我を治しました。ちなみにロスの最後の台詞はそのままの意味で「勇者さんより旅人さんの手が綺麗で、オレは好きですよ」という意味です。うっかり口走ってしまった言葉の照れ隠しと、いまいち言葉の真意をわかっていない夢主への多少の怒りからアルバを殴りました←(アルバにしてはとんだとばっちり)  2013/03/28(2013/04/01up)
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