黒紅 ――面白いね、君!名前は?セブルス?ふうん……いい名前だね!――おはよう!セブルス。 ――ん?どうかした? ――わたしはずっと、あなたの傍にいるから。 ――す、好き。ですっ。 ――ばかセブッ!なんでも一人で抱え込んでんじゃないわよ! ――あああのさ、わたしのこと、恨んでたり……する、よね。 そんなことするものか。一瞬たりとも貴様のことを恨んだりはしない。 人は自分のことでさえ、完全に理解し受諾することはできない。なのでもちろん他人の思いがわかるはずはないが、私はお前の事情は理解していたつもりだ。 あのとき、貴様がいなくなったときは、どうしようもなく――― それにしても。 もう私は死ぬのか。 重く、熱が逃げていく。 そんな感覚の中で。 体も麻痺して言うことを聞かない。そんな中で、 かすむ目を開けて見えたのは、 リリーとあの憎たらしい男の間に生まれた息子と、 己が愛する少女だった。 「セブッ!!」 悲痛に満ちた叫び声を上げながら、彼女は私に手を伸ばす。 血塗れの私に弱弱しく、震えた手を伸ばす。 私はそれを無視して、とにかく忌々しいはずのポッターに――真実を告げた。 その息子は目を見開いて、盛大に驚いていた。 ざまあない。 思わず自嘲気味な笑みを浮かべる。 嗚呼、死ぬのか。 しかし。 心残りは――ない。ないんだ。 「セブルス!!」 薄れゆく意識の中で聞こえた声は。 彼女の顔は、涙まみれだった。 ――知っているか、杏樹。 私は一度。お前を裏切り、その手を離したのだと。 それを知っても、貴様は私をなお助けようとするのか。 ……いや、そんな質問は野暮だろう。 もう限界だ。だるい。流れ出る血の感触が、しないでもなかった。 冷めゆく体が、乱暴に、しかし優しく誰かに抱きしめられた気がした。 「恰好、つけたつもりなんだろうけどっ、このままっ逝かせたり、しないんだからッ!」 そんな声も、聞こえた気がした。 ( ―――この手をもう、離したくはなかった。 ) ▼ 他の杏樹が夢主のハリポタ夢小説と比較してみれば、セブルスと杏樹との関係に、少し矛盾が生じる点があるかもしれませんが……。それはスルーしておいてください……(泣) 2011/07/18(2012/12/27move) ←back |