散る紅 ※お手数をおかけしますが、必ず一度こちらの夢主設定に目を通してからお読みください※またこのシリーズはBLDです ※R15くらい。流血等あります。BADEND注意 ※それでも問題ないという15歳以上の方のみどうぞ! 日々を過ごす中で、僕は僕を嫌いになっていった。 どうしてあの人が僕を抱くのかわからなかった。 僕には想い人がいて、それを彼にも話していたはずだった。なのに一体どう間違ってしまったのか。初めて犯されたときは痛い痛いと何度も叫んだ。それでもやめてはくれない。最後まで行為を行われた。何度も抱かれる度に、やがて自分は諦めていった。本来の想い人に触れることすら、話を交わすことすらできなくなった。僕は自分がひどく汚らしい人間に感じるようになった。与えられる快感を、無意識に求めているような気がしたからだった。 それでも何も知らない彼女は僕に話しかけてくるし、方や例の彼は相変わらず凶暴に僕を抱いた。 普段は終始笑顔を見せる、優しい人物の彼を、変えてしまったのは僕だった。なにがいけなかったのだろう。その問いを繰り返さない日はなかった。 自己嫌悪をする日常が続いて、仕舞いには自身の気持ち悪さに嘔吐した。 上司には心配されたけれど、なんでもないと笑った。色々と鋭い上司が騙されたくらいだから、僕の笑顔はちゃんとしたものになっていたらしい。 衝動に任せて腕を自傷してみた。 赤い赤い血がどくどくと流れ出た。僕は人間だった。周囲とは違う人間だった。変えようのない事実に、僕はただ自嘲した。それと同時に安心した。僕は死ねるのだ。ちゃんと死ぬことができるのだ。とても幸せなことだった。 包帯を巻いて出勤すると、まずはじめに上司にその理由を問われたが適当に誤魔化した。上司には今後はそのようなことがないように。気をつけてくださいとわかりにくく心配された。僕はその上司を騙したことに僅かな罪悪感を覚えながらも、全く後悔はしておらず、むしろ達成感の方が勝っていた。ただの下劣な人間だった。汚泥のような、生きる価値のない人間だった。 毎日繰り返し疲弊していく精神に、きっと僕以外は誰も気づいていなかった。 想い人の彼女はもちろん、同業者であるはずのあの人や上司、そして、僕を抱く彼でさえ。気づいてほしいとは思っていなかった。そのはずだ。苦しいという思いを抱えながらも仕事詰めで日々を過ごした。何も考えたくなかった。潜在意識で快楽に溺れ、想い人を裏切り、上司を謀る。ああなんて汚い人間だろう。 五日徹夜を続けていれば、上司がやってきて強制的に休ませられた。二つ返事で了承し、自室の寝台に腰を下ろした。何をするでもなくぼんやりするのはもうほぼ一週間ぶりであった。じわじわと胸を這い上がってくる嫌悪と吐き気を感じて思った。このまま生きていて、どうするのだろう。ただ自らへの嫌悪に苛まれる苦しい日々を送って、何の意味があるのだろう。それは僕が仕事詰めにすることでわざと脳裏に浮かばないようにしてきた問いかけであった。答えはいわずもがなだった。死にたいなあ、と呟いた。それは空虚な空気に溶けて消えた。死にたいなあ、と呟いた。目の前に彼がいた。 柄にもなく驚いた表情の彼は、呆然とした様子で、それ、ほんとなの、と零した。僕は笑ってはいと答えた。彼が痛いほど強い力で肩に掴み掛かってきても、僕は笑顔のままだった。 このまま生きていたって、何の意味があるんでしょう。 あなたは僕を抱くけれど、愛してるも好きも囁かないし、キスもしない。 僕は毎日僕を嫌いになっていく。苦しい日々を過ごしたところで、僕には明るい未来なんて待ってやしないんですよ。それはあなたも十分わかっていることでしょう? つまるところ、死にたいんです。 ねえ、白澤さん、いいでしょう? 死なせてくださいよ。 彼はごめん、ごめんねと稀泣した。僕にはどうして彼が泣いているのか心の底から理解できなかった。不思議そうに見つめる僕に気づいた彼は、ますます涙を流した。それを見ていて、だんだん僕はどうでもよくなった。彼の存在さえも、どうでもよくなっていた。ただ早く死にたかった。彼を振りほどいて、手短に刃物はないかと見回した。机の上にアーミーナイフがあった。嬉嬉としてナイフを手に取った僕に、必死に彼はしがみ付いてやめてくれと叫んだ。僕はそれほど申し訳なく思っているのなら、殺してくれと言い放った。彼はしばし驚愕と絶望が混ざり合った表情で固まった。殺してくれないのなら自分で死ぬと冷たく突き放すと、彼がナイフを叩き落とした。ナイフなしで殺してあげる。つまるところそれは絞殺だろうか。そんな死に方はしたくない。僕は僕が生きていたと実感しながら死にたいのだ。それは了承できません。ナイフを拾った。彼はお願いだ、死なないでくれと慟哭した。滑稽だった。彼が僕を犯しているとき、彼はこのような感情を抱いていたのかもしれない。 ねえ、白澤さん。僕はあなたのこと、愛してましたよ。 誰が見てもわかる嘘だった。 それでも彼は怯んだ。 しかし僕にとっては、その刹那だけあれば十分だった。 もう自分が気持ち悪くてしかたなかった。 この気持ち悪さから解放されるのなら、この痛みも耐えられる。 頚動脈を勢いよく切り裂く瞬間、彼の表情がひどく可笑しかった。 ( 狂人ふたり ) ▼ 当初男主の白澤お相手連載を考えていたのですが、シリアスを投入しようとした結果BADENDにしかならなかったのでボツに。そのENDをリサイクル。鬼灯リサイクルはこれでラストです。 2013/06/11(2014/03/02up) ←back |