君を憎み、君に焦がれる その日は丁度たまたま、担任の女教師が私にプリントを渡すのを忘れていた。私も、貰うのを忘れていた。 そんなこんなで彼女が来た。 そうして彼女とハルは出会った。 * んで現在。 「あーもー二人ともさっさとくっついちゃえよ☆」 って言いたくなる。ええとっても。 「どうしたの杏樹。頭おかしくなった?」 はあーとため息をついた私に、吉田ハルの兄、優山が反応した。 この毒舌には慣れている。 ちなみにここはみっちゃんのバッティングセンターの自販機前である。 今はすでに夜だから、人気(ひとけ)もない。 冷たい静かな空間。 ここだけ点いている蛍光灯が、向かい合ってソファに座っている私と優山を明々と照らす。 「いーえー別にー。ていうか、優山だってそう思わないの?」 「んー、俺はねー……」 私と彼は同い年ではない。私はいたって普通の、雫やハルの同級生だ。 だけどなんとなくタメ口。 ……といより、この大人には敬語を使う価値がないように思える。 いっつもにこにこしてて何考えてるかわからない。 襟足長いしサドだしブラコン(つまりは弟ラブ)だし。 ……でも時折、真剣になって鋭い雰囲気を帯びる。 わけがわからない。 そんなこいつに振り回されている私も。 「――ねえ優山、」 「なに?」 「――………………、やっぱりいい」 ああやだな。 膝を抱える、私。 全部見透かされてるんだから。 そうやって笑って、 認めたくないなあ。 認めたく、ないんだ。 たくさんの人に出会って、たくさんの人と接して。 だけど、彼にだけは、 優山にだけ、全部、ばれてしまった。 私が本当は、どんなに汚くて、穢れていて、ここに居てはいけない奴だってことを。 そんな私に彼は、一度だって優しくしたことはない。 ――それで、よかったんだ。 それでよかったはずなのに。 今以上を求めてしまう。 ――やめよう。 考えるのをやめよう。 とりあえず、雫とハルの関係をどう進展させるかだけに頭を使えばいい。 「――ねえ杏樹、気づいてる?」 「……何によ」 「――…………さあなんでしょう?」 くすり、と微笑む優山が憎たらしくて、ふんとそっぽを向いたら。 またくすくすと笑われてしまった。 ――ああもう、大嫌いなんだから。 * 自動販売機の稼働音だけが、この静寂を震わせていた。 ( 本当の気持ちなんて、知らない ) ▼ やっちゃった……! 『となりの怪物くん』前々から興味はありまして、先日友人に借りて読みました。すると、まあ、こんな感じで今に至ります。優山さんかっこいいです!ていうか、みんなかっこよくてかわいいんです! 一方この短編ですが。……夢主にも、過去にいろいろあったんだろうなあということです。夢主は決して、暗い性格というわけではありません。明るさでいうと、夏目ほどではないけどササヤンっぽい感じです。 相変わらずの駄文ですが、ここまで読んでくださりありがとうございました! 2011/06/04(2012/12/27move) title:群青三メートル手前 ←back |