50000hit Thanks! | ナノ
世界の終わりに添えて
※フロア捏造してます。
※時系列を間違えてるかもしれませんので、もし気づいた方がいらっしゃいましたらお手数ですが、ご一報よろしくお願いいたします。
※また名前変換の個数の関係で、夢主の名前がカタカナではありません。


前触れもなく始まったデスゲーム。
一万人のユーザーが閉じ込められ、攻略を強制された。

『ゲーム内での死は、本物』
という事実を唐突に突き付けられて、人々は前も後ろもわからない状態でパニックに陥った。
それでもゲームマスターは滔々と真実を語るのみ。だからこそこの語り口は、わたしたちに絶望的現実を呑み込まざるを得なくさせた。

――あの日確かに、わたしたちは世界の終わりを見たのだ。





「キリトは、もし突然、世界が今日で終わりだって告げられたらどうする?」

第23層の<幻想の花畑>エリア。

ここはフロア内でも奥まった場所にあり、一部のプレイヤーにしかその存在を知られていない。またアインクラッドでは珍しく、モンスターがほとんど出現しない。そのためある種の穴場的エリアとなっている。
杏樹は一本の木がある小高い丘に腰を下ろしており、その傍らで同じく寛いでいるキリトに声をかける。キリトはパンジーに似た花をいじっていた手を止め「また突拍子もない話だな」と苦笑した。

「……まあ、あれだな。俺は多分いつもと変わらないことをすると思う」

キリトは木に背中を預けて、おもむろに上を見上げ、木の葉の間から零れ落ちる太陽の光に手をかざして眩しそうに瞳を細めた。

「キリトらしいね」

ふふ、と微笑むとキリトは「じゃあ杏樹はどうなんだよ」と口を尖らせる。それが杏樹にとってはとても可愛らしくて、また笑みが零れてしまう。それを見てキリトはますます機嫌を悪くする。そこでようやく杏樹は、これ以上キリトの機嫌が下降しないよう口を開いた。

「わたしは……足掻く、かな」

出口のない仮想世界に放り込まれて一年。プレイヤーたちはアインクラッドでの生活に安住しつつある。最近では、ゲームクリアを目指して前線で戦うメンバーも随分と減ってきた。

11月6日。あの日見た錯覚の世界終焉を、再び思い出す。あの日覚えた感情を思い出す。
急に理不尽な事実を目の前に突き出されたところで、そんなこと信じられるわけがなかった。でもこのまま自分の世界を閉じて終わりたくなかった。だからあのとき、戦って足掻くことを選んだ。
おそらく、どうしようもない変えられない現実がそこにあるとしても、その努力が例え無駄だったとしても、自分はもがき足掻くのだろう。何もしないよりは悔いがないはずだから。

キリトはかざしていた手を下ろして、目を丸くして杏樹を見た。

「それはまた……杏樹らしいな」

杏樹の答えが意外だったとその様子は物語っていたけれど、キリトは同時にどこか納得したように少しだけ口角を上げた。

「ま、やっぱり世界が終わらないに越したことはないけどね」

「そうだな」とキリトが薄く笑う。その優しい笑みに杏樹が目を奪われた次の瞬間、キリトはあくびをした。なんとも間抜けな表情に思わず吹き出せば「わっ笑うなよ! 仕方ないだろ、ここにいたら眠くなるんだから!」との反論。
杏樹はそれに対しては否定せず、キリトに笑って返した。

腕を上げてぐっと伸びをする。
心地の良い気温と風が相まって、とても過ごしやすく昼寝日和の今日は、まるで一年前に『世界の終わり』を感じたことなど忘れされてしまうほど平和だった。

柔らかな風に色とりどりの花々が揺れ、その花弁がふわりと舞い上がる。
眼前に広がる美しい光景をなんとなく眺めた。
ただのゲームのエフェクトなのに、どうしてこうも綺麗なのだろうか、と不思議に感じる。いつまでそうしていたかわからない。ただ、キリトに視線を戻すと、彼は双眸を閉じてすっかり寝息を立てていた。その穏やかな表情に、自ずと笑みが零れる。

――世界はきっと、まだ終わらない。


▼ 2013/09/10(2014/02/03up)
戻る
|
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -