笑っちゃうほど遠い彼方
――本日、12月24日は、クリスマスイブであると同時に我らがメカクシ団団員NO,9ことコノハの誕生日でもある。そんな日の、メカクシ団本部。


「祭りじゃ祭りじゃー!!」
「ちょっとキドさん?!! 何飲んだの?!!」
「あっごめんこれアルコールだったっすテヘぺロ☆」
「貴様か緑やろおおおおお!!」
「でもグッジョブ!!」
「いやカノそれだめだからな?」
「セトも! もうこんなことしちゃダメだよ?」
「ごめんよマリーもうしないっす!!」


上からキド、モモ、セト、シンタロー、カノ、ユズ、マリー、再びセトである。
ちなみにエネはシンタローの携帯端末から爆笑している。
そしてヒビヤはセトがジュースとして出してきたお酒により、今はソファですっかり眠りについていた。

「……これって主役だれだったっけ……」

杏樹がセトが入れたジュースもといお酒(まだ口は付けていなかった)を片手に、七人と一歩離れた位置でぽつりと呟くと、隣のコノハ(本日の主役)は「だれだっけ……」とぼんやりとした瞳で杏樹の言葉を反復した。「おい」とツッコミを入れると、「はい」とまたぼんやりとした返答が返ってくる。
そうだったコノハはこういうやつだったと杏樹が頭を抱えると、「大丈夫?」とコノハが表情を曇らせたので、「大丈夫!」と慌てて笑顔を向けた。

「あのね、コノハ。この会の主役はコノハなんだよ? わかってる?」

「……うん?」

小首を傾げられた。
まだこの人はわかっていないのだろうか。
(クリスマスってこともあったけど、)せっかくコノハのためにパーティーを開いたというのに。その当人が気づいていないのであれば、パーティーをしている意味がない。

少し悲しくなっていると、コノハがぼそりと。

「……よくわかんないけど、みんなが楽しそうだからいいんじゃないかな」

見上げると、コノハが賑わしいキドたちを見て柔らかな微笑みを浮かべていた。

――ああなんか、どうでもよくなってしまった。

コノハの平和ボケした笑顔を見ると、何もかも投げ出したくなる。悪い意味ではなくて、今抱えている悩みすらも些細なことだと思えるようになるし、そんなことで悩んでいる自分もとてつもなくちっぽけだと思うようにさえなる。

「そうだね。みんな楽しそうだしね」

だからこうして、コノハと同じように微笑むのだ。

「あ、でもちゃんと祝わせてね、コノハ」

再びコノハが首を傾けたので、杏樹は仕方がないというふうに苦笑する。
未成年だから飲めないけれど、お酒の入ったグラスをコノハのそれに合わせた。チン、と高い音がなる。コノハは目を丸くした。

「今日が誕生日なコノハに乾杯」

改めて、お誕生日おめでとうコノハ。
そう祝詞を述べると、コノハははにかんでありがとうと応えてくれた。
……なんだ。一応ちゃんとわかってたんじゃないか、と思ったけど、そんなこともやっぱり次の瞬間にはどうでもよくなっていた。


▼ ちなみに最後の夢主の「ちゃんとわかってたんじゃないか」というのは、コノハが「今日が自分の誕生日でこのパーティーが自分のために開かれたものであるということ」をわかっていた、という意味です
  わかりづらくてすいません……
  最後に、コノハ誕生日おめでとう!!
  2012/12/24(2012/12/25up)
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