君の世界でオーディエンスを飲み込め
その場の勢いでアイドルになったはいいものの、他人の目を集めてしまう自身の体質に辟易していたモモ。
しかしキドやマリー、カノたちメカクシ団とひょんなことから出会い、交流を深めた。その過程で自らの特殊な体質を生かすことを選び、人気アイドルとしてこれからも奔走することを決めた。

才能ある者にしか存在しえない悩みだと一蹴する者もいるだろうが、実際のところ彼女のそれは元々本人が望んで手に入れたものではない。
それを受け入れることができた、ということはそれだけで称賛すべきことだとユズは思っている。





種々の歓声が飛び交うライブ会場。

ホールはとても広く、上の方の客席のユズをはじめとするメカクシ団の面々からは肉眼ではモモの姿はまるでただの棒のようにしか見えない。
しかしステージで歌うモモの背後の大きなスクリーンに、笑顔いっぱいの彼女が映し出され、その瞬間には必ず観客が湧きあがる。

ただ純粋に、すごい、と感じた。

自分の能力を受用しただけで、これほどまでに輝くのか。
暗い観客席にゆらゆら揺れる色とりどりのペンライトが、明るいステージのモモと合わさって、ひときわ眩しく、遠い世界の出来事のように思えた。

……おれでさえ、自身の能力を受け入れるには長い月日を経たというのに。

彼女は本当に前向きだった。どこまでもひたむきに明るかった。


――羨ましい。

そう、その感情は羨望そのものだった。

モモのように、もっとひたむきだったなら。
もっと、前だけを見据えていたら。
あのとき、あの場所で、彼を、彼女を、救えていたかもしれない。
脳内を掻き乱す他人の記憶にも、振り回されることもなかったかもしれない。

例えばの話だった。
思い返すほど鮮明に輪郭を帯びる、果てしなく繰り返した過去の話だった。
柄にもなく在りし日に思いを馳せる自分に、ただ羨むだけなら容易いことだと言い聞かせた。
問題はそのあとからなのだと。

「みんなーッいっくよー! 次の曲! 如月アテンション!」

会場の熱気が一気に上昇した。
誰もがモモのパフォーマンスに魅了されていた。
それは能力だけで成されたものではない、彼女に元々備わった才能でもあるとわかったからなおさら。

モモの眩しさに、その輝きに、まだまだ敵いそうにないなあとユズは苦笑を浮かべた。


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  2013/06/14(2014/01/07up)
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