一日中家にいても、気持ち悪くなるだけで、外出した時よりも疲れたような気がする。
 夜八時くらいになってようやく外に出ようと決心した俺はコートも羽織らず部屋の鍵も閉めずに自宅を出た。
 今日一日中外にも出ず仕事も放棄していたのは、なにもかもがどうでも良くなってしまったから。時々、無気力になってしまう。理由がある訳ではない。自分でもわからない。ぼんやりとしていたらいつの間に何に対してもやる気がなくなっていて、気付いた時には体はものすごく疲労していたりする。
 今日はずっとその状態だったから頭が痛む。ガンガンとした重みが全体に広がって、フラフラしながらも新宿の街を歩いた。
 仕事帰りの人に紛れていると、なんだか自分も仕事をしたような気分になって少しおかしい。錯覚はやめよう。俺は今日何もしてないんだ。波江さんは俺に毒を吐きつつも用意しといた仕事だけは片付けてさっさと帰ったし。
 信号が青になるのを待つため立ち止まって、なんとなく周りを見回してみた。寒そうにマフラーに顔を埋める人、楽しそうに電話してる人、会社の上司、部下かな。今から飲みに行こう、と話してる人。
 俺はむしょうに泣きたくなった。目が潤むのを感じて上を向く。なんで泣くんだ。意味が分からない。
 信号が青に変わり、周りと合わせて道路を渡る。マンションからはどんどん離れていって、俺はどこに行くのかと、自分で疑問を抱いていた。
 寂しいなら家に帰って寝ればいい。寝て、起きたらセンチメンタルな今の自分が馬鹿らしく思えるに違いないから。今までだって、そうだった。

 でも、無理だ。
 足が動きそうにない。寝たくない。誰かと話したい。
 携帯を取り出して縋る思いで電話を掛ける。プルルル、プルルル。というコールの音が俺の心臓を掻き立てた。やばい、収まったはずなのにまた泣きそうだ。
 少し経って、コールの音が止み、電話越しのちょっと変なシズちゃんの声が聞こえた。

「もしもし……」
「…………」
「おい、……臨也だよな?」

 鼻の奥がつんと熱くなる。寂しいよ。シズちゃんの声聞いたら余計寂しくなったよ。
 無気力な心にコトリと音を立てて、固体が落ちてくる。そんな感じだった。もう泣く、でも人前で泣きたくないからまた、ぐっと堪えて涙目で済ませた。
 悲しい時とか、よく分からない気持ちの時に、ただ声を聞くためだけに電話ができる相手がいるっていうのは、嬉しいね。

「シズちゃん」
「……あ?」

「寒いよ」



 寂しいなんて言葉、素直に言えない。寒いって一言告げるだけでシズちゃんは、俺を抱きしめにここまで来てくれるから大丈夫。シズちゃんは、俺のこと全部全部理解してるから、 大丈夫。







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