シズちゃんと一緒にいて喧嘩ばかりして、毎日のように傷を作ってはイライラさせられたり。
 何一ついい思いをしていない。しかしもしシズちゃんと出会っていなかったらそれはもうつまらなくて寂しい毎日が続いていただろう。
 つまり俺は、シズちゃんがいてくれることに嫌気を感じながらも喜びを感じているということだ。
 驚きと共にくるのは気持ち悪さ。
 自分が、あの大嫌いな宿敵に人生の楽しさを与えられていると思うとなんとも言えない感情が込み上げてきた。
 最悪だと嘆くべきか、生きているとなにが起こるか分からないねと楽しむべきか、それさえ解らずいらいらいらいら。
 これでシズちゃんは俺のことはただ嫌いなだけ。不快。消えろ。そんなことしか思っていなかったら不平等すぎる。
 シズちゃんも、嫌に思いつつどこかで俺の存在に喜びを感じてくれていたら、少しは救われるというのに。

「不思議だね」
「……あ?」

 組み敷かれ。中には熱い塊を挿れられた状態でふと頭に浮かべていたことを声に出してみた。
 不思議だよ。
 会った時から喧嘩喧嘩喧嘩の毎日で、本気でこの世から消えてほしいと思っていたのに。
 今のこの状況に、有り得ないほど胸が満たされている。
 目の前の男が、かっこよくて愛しくて愛しくてたまらないと思っている。
 人間って難しい。そもそも自分の気持ちさえ分からないのに他人の気持ちなんてわかるわけがないし、理解することだってできない。
 わかったふりして上辺だけの言葉を与える奴は嫌いだ。優しい言葉を掛けて、自分のイメージを上げようとする奴も嫌いだ。
 そしたら、それらにまったく当て嵌まっていないシズちゃんのことを俺は好きということになってしまうじゃないか。
 そんなはずない。
 心の奥底で否定するのに、否定はうまく形になって出てこなくてもやもやしたものがぐるぐると俺の中を回る。
 シズちゃんはどんなふうに思ったって俺の中では特別で、人間という一枠に収めることのできない存在で、俺の人生を変えた男で、
 けれど好きというのは少し違う。
 それじゃあ、なんでこんなことをしているという話になるが、それは俺自身よくわからないんだ。
 シズちゃんなんて知らなければ良かった。知らないまま生きていけば、こんな感情も知らずに過ごしていけたのに。
 でも、そしたら俺は、

「最悪に気分が悪いよ」
「……それ今言うか」
「……でも、抜かないで」

 シズちゃんと繋がって、シズちゃんと抱き合って、彼を感じながら俺はおもむろに目を閉じた。こんな現実、見ているだけで疲れるから。







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