朝は眠くてたまらなくて、特にこの時期はなかなか布団から抜けられなかった。
 まだ、あと5分だけ。それくらいならいいだろう。俺はゆっくりと目を閉じて遠のく意識を感じながら、ああ幸せだなあと思った。
 でもどうしよう。このままじゃ5分どころか1時間は寝てしまうかもしれない。
 こういう時は大抵起きれず、寝坊して焦るというオチなのだから。
 分かっているけどどうしようもない。もう、寝てしまう。
 でもどうせここが仕事場だし、波江さんは俺が寝てたって淡々と自分の仕事を済ませるだけだろうし、大丈夫。いいや寝ちゃって。
 しかしそこで思い出して良かったのか失敗なのか、俺は朝から予定が入ってることを思い出してしまった。

「やっば……」

 ガバリと勢い良く起き上がって外出の準備をする。髪の毛はこのままでいいや。とりあえず、向かわなければ。遅れたりしたら……多分怒らないだろうけど、話す時間が減ると思ったら嫌だった。

 家を出て、周りの目も気にせずに走る。電車を待つのは嫌だから、ちょうど通りかかったタクシーを無理矢理止めて池袋まで向かうよう告げた。
 早く着いて。早く会いたい。たくさん話したい。俺の胸は彼のことでいっぱいだった。

 池袋駅が見えてくれば、財布に入っていた一万円札を出して適当に置いた。釣りをもらってる余裕もない。タクシーから降りればまた走り出して、待ち合わせ場所へ向かった。

「シズちゃん!」

 少し離れた場所にいる彼は、走って来る俺の姿に気付いて幸せそうに笑った。
 その顔を見て、俺もじんわりと心が温まるのを感じた。
 ああ良かった。どんなに怠くたって起きて、急いで向かってあの笑顔が見れて。
 朝は辛いけど、その後にこんなに幸せなことがあるのなら、どんな寒さにだって耐えよう。
 俺は、あと1秒の距離も、もどかしく、ただただ早くシズちゃんに抱きつきたかったし話をしたかった。
 朝から、なんて俺は幸せものなのだろうか。







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