とにかく、早く会いたかった。
 爽やかな秋風が吹いて、自分の身体を冷やす。でも今日は太陽が出ているからそんなに寒くない。空は真っ青で、途切れ途切れの白い雲が浮かんでいた。
 平日の昼下がり。そんなに混んでない電車で、ゆったりと座席に腰を下ろす。街を駆ける車内には窓から太陽の光が差し込んできて落ち着いた空間を作り出していた。昨日は仕事で遅くなってしまい、全然寝てないから眠いはずなのに今、俺はまったく眠くなかった。それよりも心が浮ついて、軽い焦りのようなものに追われてる。焦りと言っても、悪い意味ではなく、早く早くと思う気持ちが重なってしまい、心がざわざわしているのだ。池袋、というアナウンスが耳に入りドキドキが最高潮に達する。今日は妙なことに、俺は新宿から池袋に出ている。逆にあいつは池袋にいる。すれ違いというものだ。俺が臨也に会いに新宿に行ってる間に臨也は俺に会いに池袋に向かっていたらしい。お互いサプライズで会うつもりがうまく入れ違いになってしまった。だから、臨也を俺の家に待たせて俺が池袋に戻ることにした。ちなみに臨也は合鍵を持っているから中に入れる。しかし、慣れない気分だ。いつも新宿からは臨也と別れて帰るのに、今は臨也に会いに新宿から出るなんて、なんだか、不思議だ。
 池袋に着いて普段とは違うように見える街を歩く。臨也が待ってるのか。それを思っただけでドキドキが止まらなかった。思わず鼻歌でも歌ってしまいそうなのをギリギリで抑える。帰ったら、まずなんて言おうか。普通にただいまと言うか……いや、臨也が住んでるわけじゃないからそれはおかしいか……じゃあいらっしゃい? なんか固いな。じゃあなんて言えば……無言で抱きしめるとか? そんなこと恥ずかしくてできねえや。いろいろと妄想を巡らせながらも、結局どうするか決まらないまま家に着いてしまった。
 扉の前に立って深呼吸をする。鍵をポケットから出して差し込む。でもなかなか回せない。……せっかく臨也がいてくれるんだから、インターホンでも押してみるか。鍵を抜いて、指をあてた。ああ緊張する……いや、なに緊張してんだ。俺の家だぞ。意を決してインターホンを押した。

「…………」


 反応がない。寝てる、とか? もしかして来てないとか。しばらく待っていると、ドタバタと足音が聞こえて、なんだ? 動揺していると扉がガチャガチャと開かれる音がした。

「おかえりシズちゃん!」

ドアが開かれて、臨也が満面の笑みでそう言ってくれた。つられるままに、俺も無意識に、

「ただいま」

 自然と口から言葉が零れていた。







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