目の前でシコりやがったシズちゃんのものの先走りがポタ、ポタと顔に垂れる。頬や額やぎゅっと閉ざした唇に、どんどん垂れてくる。もう気持ち悪いという領域を越して、どうでも良くなってきた。さっさとシズちゃんがイってこの行為が終わることを、願うことにした。……願うことに……ってちょっと待て。え、もしかして、もしかしなくても、この状態でイっちゃう感じ? そしたら俺の顔に直撃する! それだけは勘弁したい。顔射とか、きもすぎる。そんな俺の考えに反するように、シズちゃんの手は早さを増していく。先端が、ひくひくとしてるのが見えて、俺は動けない代わりに口で抵抗した。

「や、やめろ! マジやめろ! シズちゃんきもい、AVの見すぎ! 童貞のくせに、調子に乗んなよ。童貞が調子に乗った罪で訴えるぞ!」

「勝手に訴えろよ。誰も相手にしないだろうけどな」

「やだ、ほんとやめろ、無理無理無理!」

 頭を振って、拒否したその時、びゅくっ、と音がして俺の目の前は真っ白になった。というか、白い液体が、俺に降ってきた。かかったところに熱を感じる。それを感じた瞬間、なにも考えることができなくて放心状態になった。シズちゃんは、熱い息を吐いて、満足そうに笑った。

「……いい顔じゃねえか。臨也」

 君は嫌な顔だね。そう言い返す余裕もなく、目をパチパチさせるしかなかった。
 そうして数十秒ほど思考を停止していて、やっと戻ってきたら一気にたくさんのことを感じた。喋ったせいか、開いた口の中にも飛び散ったらしい精液の苦い味。ツンとした臭い。どろりと、重量に従って、俺の顔から地面に流れる精液の感覚。

「さい、あく……」

最悪だ、最悪だ最悪だ! こんな奴に……化け物に顔射された! 俺は今までこれほどの屈辱を受けたことがない。これなら、まだ、部屋中に精液撒き散らかされる方がマシだった。いやむしろ撒き散らかしてくれ。好きなだけ撒き散らかしていいから、時間を戻してくれ。そんな俺の祈りなど叶うはずもなく、時間は進み続ける。

「……なあお前、散々嫌がってた割にはよぉ……興奮してんじゃねえか?」

「はあ? なんでそうなるわけ」

 眉をひそめて、嫌そうに睨みつける。シズちゃんはニヤリと笑って、俺の股の間に足を移動させて膝を押し付けてきた。

「ぁっ……! さいあく……」

うわ、なに、なに今の声。俺から出たの? 超キモいんだけど。すかさずなかったことにするよう、不快を含めた声を出したのに、シズちゃんは勝ち誇ったようにしていて、イラッとした。

「なに……シズちゃんのくせに」

「人がシてるとこ見て、勃たせるなんて、変態だなあ臨也くん?」

「変態に変態って言われたくないんだけど……」

 自分の股間には、確かに熱が篭っていた。しかも、少し、濡れてる感じもするし。なんで身体……てか股間って素直なんだろうね。言葉と同じように股間も嘘をつけるようになればいいのにね。まあそんなことになったらある意味困るんだろうけど。

「臨也、お前も、気持ち良くなりたいよな」

「いや、全然」

「嘘つけ。ズボンから染みるくらい、濡らしてるくせによぉ」

 先走り染み出させるように、ズボンをぎゅうとおされて、腰がひくりと震えた。なんということだ。シズちゃんに股間を刺激されるなんて。今日は、シズちゃんに初めて股間を刺激された日と名付けよう。毎年この日になったら、パーティーを開くんだ! ケーキと、寿司と、そしてこのズボンを用意して。

「イきたいよな」

「ごめんすっごくイきたくない」

 いいからそこどけよ! 萎えたちんこが目の前にあるっていうのも結構気分が悪い。嫌々にそれを見ると、少し精液がついていて、それがすごく気になって、思わず舌を出してしまった。なにしてんだ。俺。

「おい臨也……」

その姿を見たシズちゃんは驚いたように目を見開き、声を詰めていた。なんだか、やっと自分が優位に立ってたような気がして、そのままペロリと残った精液を舐めた。苦くてまずいけど、そんなのいまさらだ。見せつけるように喉を上下させれば、途端に顔を真っ赤にするシズちゃん。やっと、最近の俺らしくなってきた!

「……お前……やりやがったな」

「やりやがったよ。なんか文句ある?」

いつもの、憎たらしい笑みを見せれば、シズちゃんは息を荒げた。……ん? 荒げた。あらげた?

「お前……俺をこんなんにしといて、責任取らねえってことはねえよなあ」

「は? なにが?」

 見ないようにしてた、視界の端のものに変化が……再度目線をそれに移動させると、また、勃起してる、だと?

「……え……」

 なんで、今のくだりで勃たせてるんだよ! どういうこと。え、マジでどういうこと。さっき顔を赤くしていたのは、恥ずかしいんじゃなくて、興奮してたってことかよ。軽く涙目になってシズちゃんを見上げると、すごーく楽しそうに笑って、自分のちんこを握っていた。もう駄目。意識失っていいかな。

「あ、そうだ」

 舌を噛み切ろうとしたところで、軽い声が耳に入った。シズちゃんは、あっさりと俺の上から身体を下げて、今度は俺の足の間に正座し出した。

「……なんですか」

「俺の前に、お前のこれをなんとかしようかと」

 なに、声に出す前に、シズちゃんはあろうことか、俺の股間に顔を寄せて、服越しにちゅぅう、と吸うようなキスをしてきた。

「っ! …………」

びくん、中心から、体中にかけて甘い痺れが走る。こっ……こんな奴の口で……! それ以前に、男の股間に顔寄せてなにが楽しいんだよ! ただ不快な気分になるだけだよ。俺はそうだ。なのに、シズちゃんは下から上に舐め上げたり、染みてきた先走りを吸い取るようにする。う、わ……マジ、やめろ。

「はっ……ぁ、」

「声我慢すんなよ」

「し、て、ない」

 強がってみたけど、結構やばい。でも、シズちゃんにされて声を出すなんてそんな情けないことに、なってたまるか。
 息が乱れてくる。目も潤んできて、顔が熱い。ズボン越しというのが、すごく、もどかしい。自然と次の快楽を待ち侘びてしまっている自分になんとも言い難い気持ち悪さを感じながらも、やっぱり股間は素直だった。


「は、ぁ……、ん……」

「……よし。こんなとこでいっか」

「……へ?」

 快楽に身体が麻痺していたところで、シズちゃんは、口を離した。なに、なにこの展開。シズちゃんをじっと見つめると、奴は、こんなことを言いやがった。


「あとは、自分でやれよ!」

…………はああ!? ベッドから下りたシズちゃんは、勃起しているものを無理矢理パンツに押し込み、ズボンを履いている。ちょ、なにその帰る準備をしてます的な行動。

「じゃ、俺はこれで」

「ちょっと待て!」

 とっさに上半身を起こして俺が叫ぶと、シズちゃんは、計画通りニヤリ。と、某漫画の死を司るノートを所有した青年のように笑った。やっ、やられた……。俺がシズちゃんの思い通りの行動をしてしまうなんて、なんということだ! もう、ここまで来れば仕方ない。覚悟を決めてぶっきらぼうに言った。

「イきたいんだけど」

「分かった」

 素直に答えてくれたことに安堵しながらも、悔しさがある。むすっくれた顔をして待っていると、ベッドに戻って来たシズちゃんは、しかしただ俺の前に座るだけでなにもしてこない。

「……えーと、」

「ほら、早くやれよ」

「いやいやいや、……え?」

 なんで、どういうことだ。こめかみに汗が流れて、乾いた笑いを見せる。

「イきそうになったら、触ってやるからよ」

 なんだと……。もはや怒鳴る気力すらない。もういい。仕方ないんだ。仕方ない。見てろよ静雄。俺は、どんなことだってこなすんだからな。

 意地とプライドをかけて、俺はバックルを外した。







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続きます







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