最近は陽が傾くのも早くなって、17時30分現在では、遠くの空から、オレンジ、水色、青、と色が変わっていた。公園のベンチに座り、それを見て、綺麗だなあと感じながら隣にいるシズちゃんを見る。いつものように煙草を吸っていて、彼もまた、遠くの空を見遣っていた。

「もうすっかり、夏は終わっちゃったねえ」

「ああ……」

 今年の夏も、いろいろなことがあったなあと思い返す。毎日のように追いかけっこをしたり、海に行ったり、祭りにも行ったな。とりあえず、夏を十分に満喫した。ただ、異常に暑かった。でも今はその暑ささえ愛しく思えてくる。

「夏は、やることやったし、秋はどうしようか」

「林檎狩りにでも行くか?」

「あはっ、俺達で?」

「俺とお前で」

「まあいいんじゃない? じゃあ、冬はどうしよっか」

 シズちゃんの顔から目を逸らして、また俺も空を見ることにした。すっかりオレンジは消えていて空は海のように見えた。

「冬? 冬つったら、雪合戦とか、」

「シズちゃんと雪合戦とか恐ろしくてできないし」

 苦笑いを小さく零すと、隣からも小さく笑うような声が聞こえてきた。肩に頭を預けるようにして寄り掛かれば、ぐっ、と押し付けられて、その力加減がちょうど良くて、気持ち良かった。

「じゃあ、春は?」

「来年の予定までもう決めんのかよ……そうだなあ、花見?」

「そうだね。二人だけじゃ寂しいし、新羅とドタチンも誘おうよ」

「じゃあセルティも誘おうぜ。あと寿司食いてえしサイモンとか」

「来良の三人も来たら盛り上がりそうだなあ」

「お前そんなに友達いるっけか?」

「……ドタチンに誘ってもらおう」

 冗談か本気か分からないまだ先の計画を立てて、なんとなく温かい気持ちになっていた。そこまで話して口を閉ざした俺とシズちゃんの間には沈黙が流れる。別に嫌な沈黙ではない。むしろ心地好いくらいだ。雲がいくつも流れてきて、空の壮大さを表しているようだった。まるでそれらは俺らに迫ってきているようで、思わず目を細めた。


「寒いね」

「寒いな」

 ポツリとそれだけ言ってまた黙る。さらさらと俺の髪を梳くように触れてくる手が愛しい。動物を扱うようにするもんだから、猫のように、首筋に擦り寄ってみたりする。寒い空気の中でもシズちゃんの身体は熱を持っていた。
 当たり前のようにこの先の季節もお互い一緒にいることになっていたけれどそれはどうなのだろう。まだ分からないことはたくさんあるが、俺はシズちゃんとこれからの季節も、何回も何回もずっと一緒に過ごしたいと思った。林檎狩りも雪合戦も花見も、そんな普通のことに、どこか憧れがあった。それを叶えてくれるシズちゃんは俺の中で、大切すぎる存在になっていた。

 だから彼とだけは、どうか引き離さないで。







1010072037






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