いちごみるくの飴を買った。昔、よく妹たちが舐めていたのをもらっていた、懐かしいものだ。噛むとサクサクしていて、舐めると口いっぱいに甘い味がふわりと拡がる。売り物や、甘い物はあまり好きではないけどこれは特別で、懐かしいこの味が好きだった。

「これ、なんだ」

「ん? ああ、飴だよ。いいよ舐めて。俺そんなに舐めないし」

俺の家に来ていたシズちゃんは、デスクの上に置いてあった飴の袋を持ってソファーに座った。その中から一つ、取り出して、口の中に放る。

「あ、うめぇ」

「でしょ? いいよ持って帰って。また買うし」

「じゃあ遠慮なく……てか甘くねえかこれ。俺は全然好きだけどよ、お前は苦手なんじゃね?」

「基本甘い物は食べないけどそれは特別好きだよ。コーヒーと一緒に食べれば甘さが後残りすることもないしね」

話しながら煎れたコーヒーをソファーまで持ってく。シズちゃんのは砂糖とミルクを大量に入れてやった。俺なら気持ち悪くなっちゃうだろうけど、彼にはこのくらいがちょうどいい。

「シズちゃんはホンット甘いのが好きだよねー」

「……そうか?」

「そうだよ! そんな風には全然見えないのに。意外と可愛いとこあるから困っちゃうんだよね」

「なにに困るか分からないけどよ……お前は可愛いとこねーよな」

「別に可愛いって言われて嬉しくないしそれでいいよ」

「嘘つけ。セックスの時可愛いっつたら中締めつけるくせに……」

「なにか言った?」

すかさず言葉を遮る。エロはいらないんだよエロは。せっかくのほのぼのとしたティータイムが台無しじゃないか。てかセックスの時可愛いって言うってことは感じてる俺は可愛いってことだろ。つまり、俺には可愛いところがある。どうだシズちゃん。なーんてアホらしいことを考えながらコーヒーに口をつけた。うおっ、なんだ。苦いぞこれ。話しながらつくったから間違えたのか。あーあ、作り直そうかな。シズちゃんみたいに砂糖やミルクをコーヒーに入れるのは俺は好きではない。

「あ、そうだ」

「? なんだよ」

一つの案が頭に浮かんだ。シズちゃんの隣に移動して頬を両手で挟みこちらを向かせた。そっと、サングラスを取ってテーブルの上に置く。やっぱりシズちゃんってイケメンだね。俺面食いだから、良かったねイケメンで。

「なん、だよ」

「ちょっと、口貸して」

「は、……」

小さく唇を開いてシズちゃんの唇にかぶりつく。薄く開いたそこから舌を侵入させて彼の咥内を味わった。ただ、味わうためだけに舌を動かす。そういう目的はなかったのだけど、スイッチが入ってしまったらしいシズちゃんが俺をソファーに押し倒してもっと もっと深く唇を重ねてきた。絡み合った手が熱い。シズちゃんの手はおっきくて骨ばってて、男らしい。ぎゅ、と離さないように指に力を込めた。なんだ、俺だって乗り気じゃないか。まあ目的のことは達成できた。シズちゃんの口の中はやっぱり甘くて、苦さで痺れていた俺の口を溶かした。

「ん、……ふ、ぅ」

だんだんにちゅくちゅくとした音が静かな室内に響くようになって、シズちゃんの手は俺の手から離れていて、下半身をまさぐるようにして撫でていた。

「ぁっ……シ、ズちゃ、やるなら、明かりを、消して……」

「わりぃ……そんな余裕ねえわ」

カチャカチャと落ち着きない動作でベルトを外された。そこにはすでに半勃ちしている俺自身があって、顔が熱くなった。

「や……シズちゃん、そんな、見ないで」

見られて、興奮してどんどん反応を示すのが分かる。恥ずかしい。下半身が濡れていく感じがする。

「お前、やっぱり可愛いな」

「あ、あ、ゃあ……そ、こ……」

亀頭を触られ、そこに溢れてきた体液を塗りつけるようにして、そこばっかり、刺激してくる。やばい、堪らない。けど、今一つなにかが足りなくて腰がびくびく跳ねる。


「シズちゃ、ん……後ろも、触って……」

「は、それなら、四つん這いになれよ」

「ん……」

素直に従ってソファーに手をつき、尻をシズちゃんに向ける。ひくひく収縮してるのが分かる。そして、またシズちゃんにじっとり見つめられてるのも、感じる。

「や、だ……早く、触って」

「……ふーん」

なにか一人納得したような声を上げたシズちゃん。後ろからガサガサした音が聞こえた。これは、

「な、にする気……」

「お前のここ、物欲しそうにひくひくしてっからよ、……食べさせてやるよ」

「な、なに、え……ひゃっ!」

「すげ……エロ」

これ、もしかして、もしかしなくても、飴。飴が入ってる。嘘、それを自覚した途端、ありえないほど興奮して、身体が痺れた。そして次にくる感覚に俺は声を上げた。

「あ、んぁああ! ぁ、はぁ、や、あ、あ、」

ちゅ、じゅく、卑猥な音が尻からする。ぬるりと熱い、柔らかい、ざらざらした、シズちゃんの舌、が、

「あ、あ、あぁん、はぅ……きもち、い、きもちいいよ、ぅあ!」

唾液をたっぷり乗せた舌が俺の中を出入りする。たまにぐるりと舐められるものだから、たまらない。

「ぁうっ……や、やぁ! しず、ちゃ、シズちゃん、」

「はっ……すっげ、甘え……」

かかる吐息にも身体が震えた。あ、もう、だめ、無、理

「あ、うゃあ、ああ!」

一際大きく声を上げて、俺は達した。ポタ ポタ、白濁がソファーにシミをつくっていく。

「イった、のか」

「ん……ごめ、」

「いや、謝らなくてもいいけどよ、その……」

「……なに……?」

なんとか力を入れて、身体の向きを変えてシズちゃんと向かい合う。彼の股間は、服越しでも分かるくらいしっかりと反応していた。

「いい、か?」

「……仕方ないなあ、うん……いいよ」

首に腕を絡めて、もう一度二人でソファーに倒れ込んだ。性急な動きで下半身に纏うものを脱いだシズちゃん自身が、中に入ってくるのを感じてすごく満たされた。耳元で荒い息を吐きながら名前を呼ばれる。いいよ、もっと もっと。

 いちごみるくと同様、この甘さは嫌いじゃなかった。







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