電話をしてから二週間後、俺は社長と会った。交渉は驚くほど簡単に終わった。ほしいと言われた情報を教えて、その代わり、奴らを社会的に潰してくれということだったのだが、あっさりと承諾してくれてそれからさらに一週間くらいしてニュースを見たら奴らは逮捕されたという内容が流れていた。そこまでしてくれたのか……と思いつつも結局奴らはそれだけの存在であって、会社でも大した人間じゃないことは分かった。あと、もういくつか重要な情報を渡すことでシズちゃんの件を許してもらい、これから二度と手を出さないよう頼んだら、それも受け入れてくれた。実は今頃そんなことどうでも良かったのだろう。

『臨也! ニュース見たよ。なにがあったんだい?』

朝、新宿にあるカフェで朝食を取っていたら新羅から連絡があって、俺は上記の通りに説明してやった。感心したような声を上げた後、違う話題を切り出してきた。……説明するだけして切ろうとしたのに。徹夜続きのせいで眠いんだよ。

『静雄くんには、伝えたのかい』

「いや……まだ」

『なんで伝えないのさ。早く言いなよ』

「うーん……」

正直怖かった。奴らはもういない。心置きなく付き合おうと言ったとしても、もし断られたら? それはないとは思うが、話し掛けるまでの勇気とか、上手く話せるかとか、いろいろな不安があった。

『そういえば補習はどうなったの?』

「ああ、昨日終わったよ」

そうそう補習。あれは最悪だった。一応俺もシズちゃんも、最後の最後まで行ってたんだけどもちろん一言も喋らないし、目も合わせないし。……そんな感じだった。
 もう夏休みも終わりに近付いて、このまま学校が始まるとしたら、すごくすごく気まずいだろう。また無視し合う毎日とかやだ。

「新羅から言ってくんない?」

『はあ? なんで僕が。直接伝えたほうがいいでしょ。そこに僕が入るとか意味分かんないよ』

「ですよねー」

……はあ。だよね普通。うーん、ドタチンに頼もうかな。でも新羅と同じようなこと言いそうだし……

「だってシズちゃん俺からの電話絶対出ないだろ」

『あー、確かにそれは言える。じゃあさ、夏休みが明けて学校で会った時に言えば?』

「そんなの無理だよー……」

というか、やばい眠気がそろそろ半端なくなってきた。すごく眠い。そこで電話越しにインターホンの音がした

『ん? 誰か来たみたい。ごめんちょっと待ってて』

「うん」

タタタッと走る音がして、ガチャガチャと鍵を開ける音がした。
 なにやら新羅が騒いでる声が聞こえるが困ったことに眠い。あ、だめだ寝る。意識がずぶずぶと沈んだ頃に新羅の声が耳に入った。

『臨也、ちょ、今静雄くんが来て、君のことを探してるって……』

ああごめんよ新羅。なに言ってるか分からない。おやすみ。

『ちょ、無言? 臨也、君今どこにいるの。静雄くんが家まで行ったらしいけどいないって』

『おい臨也! どこにいやがる。無言かよもういい。探しに行く!』

ガチャ 電話は切れた。俺はという急展開についていけない新羅。俺を探しに新羅の家を飛び出したシズちゃんのことなど知らずテーブルに突っ伏して夢の世界へと飛び出った。







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