「あー! 楽しかったね」

一通り海で遊び終えた俺達は、現在昼食を海の家でとっていた。だからなんで俺の目の前にシズちゃんが座る配置なんだよ。

「そういえば、ホテルって4部屋取ったのか?」

「いや、2部屋だけど。お金のこととか考えて」

ドタチンの言葉に新羅が答えた。ホテルの予約は全て新羅に任せた。しかし2部屋って……

「誰と誰が一緒になんのさ」

「えー、門田くんはどうしたい?」

「俺は誰とでも……」

「じゃあ俺新羅とがいいー」

部屋割りは結構重要だ。いや、俺はシズちゃんと一緒にならなければドタチンでも新羅でもいいのだけれど。

「てことは俺は静雄と一緒か」

「あ、でも、」

「なに、新羅」

「僕いびきがすごいよ」

「は?」

新羅? 俺は怪訝な顔をした。新羅は肩を竦めてペラペラと喋り出した。

「臨也って神経質そうじゃん? だから僕がいびきをかく度にたたき起こしそうじゃないか。そんなの嫌だよ。でもいびきを止めるのは無理だし、だから俺は臨也と一緒の部屋は駄目だな」

「や、それは俺からも断るよ。じゃあそしたら誰が……」

「俺は嫌だぞ」

すかさずそう言ったシズちゃんに、新羅はニヤリと笑った。

「……じゃあ、僕の相手をできるのは門田くんだけだね」

「まあ俺は別にいいが……」

「……ちょっと待って」

なに頷いちゃってんのドタチン。だってそしたら、シズちゃんと俺が一緒になっちゃう。

「ねえ新羅……」

「おや臨也、やっぱり俺と一緒の部屋がいいの? 俺うるさいよ」

この際うるさかったって関係ない。新羅と一緒でいい。が、

「……ったく、分かったよ」

ため息をつきながら俺は自分でシズちゃんと一緒の部屋になることを許してしまった。
シズちゃんの表情は、変わっていなかった。……意識してるのは俺だけなのだろう。



昼食を終えてから、再び海に入り夕暮れまで遊んで、また明日来ようと上がって、更衣室で私服に着替えた。

「夕飯はどうしようか」

「ホテルの中になんかあるでしょ」

「待て……ホテルのは高いぞ」

「俺そんな金持ってねえよ」

うーん、と4人で唸る。俺は金あるんだけどな。あと新羅も。ただシズちゃんとドタチンは普通の学生だから違うのだろう。

「ちょっと歩いてたら飲食店とかあるだろうし、遠回りしてホテル行こ」

新羅の提案にのって、少し方向を変える。
 海に目線を向けると、夕日が沈むとこだった。ゆっくり、ゆっくりと消えていくそれを見て、純粋に綺麗だなと思った。

「あそこでいいんじゃないか」

ドタチンが指さした先には、ファミレスがあった。無難だ。

「いいんじゃない」

4人でこんな風に一緒にいるなんて不思議だ。できれば時が止まってほしかった。だってこのまま夕食を終え、ホテルに行ったら、俺はシズちゃんと二人きりになってしまう。







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