この体制で何分経っただろうか。
密着している部分がいやに熱く感じた。
「まだ、着かないのかな」
「んーと、あと二駅で着くっぽいぞ」
二駅。二駅我慢すればやっと解放される。ぎゅっと握り拳を作って堪える。
「っ!」
ガタン その時急に電車が大きく揺れた。彼も突然の揺れに驚いたようで、周りの反動で足元を崩し、俺の背中に身体を深く、密着させた。
「……わりぃ」
「う、うん、へーき」
平気なわけない。彼が俺に倒れ込んできたことにより、耳に、彼の吐息が直にかかる。やだなにこれ。なんかやばい。
「シズちゃん……」
「……どうした? キツイか?」
「ちがっ……息」
「息?」
失敗した。そんな近くで声を出さないで。シズちゃんの声って、ただでさえやばいのにこんなに近くで。
「おい着いたぞ」
不意に、ドタチンの声がして、はっ、と意識を周りに向ければどんどん人が降車をしている。た、助かった。
「シズちゃん、着いたって。もういいよ」
早く抜けたくて言うと、彼はすんなりと離れてくれた。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとね」
「でもお前、顔真っ赤だぞ? 熱中症になったんじゃねえの?」
額に大きな掌が触れ、びくりと体を強張らせてしまった。
「あ、いや、熱中症にはなってないから!」
慌てて一歩下がり否定する。逃げるようにドタチンと新羅の間に割って入った。
「さて、まずどこいく?」
駅から出て、眼前に広がる海を見る。青い空がきれいに海に映えていて、早くあの中に入りたいと思った。
「海! 海入ろーよ!」
「うん。俺も入りたい」
騒ぐ新羅に合わせて海を勧める。よし。海に入るか。と決まり、近くにある個別の更衣室で水着に着替える。パラソルを貸りてそこに荷物などを置いた。
「あれ? 臨也なに羽織ってんの」
俺は日焼けするのが嫌で上に薄い白のパーカを羽織っていた。
「そのまま海に入るのか?」
「違うよドタチン。新羅に日焼け止め塗ってもらったらパーカ脱いで入るから」
「あれ? 僕指名?」
「……つーか、門田と臨也、初対面だよな……?」
「え?」
「あ」
しまった。ついつい普通に話してしまった。ドタチンと目を合わせる。俺がなにかうまいことを言おうと口を開くと、新羅が横から割って入ってきた。
「この二人早くから待ち合わせ場所に来てたみたいでさ、僕が行った時にはすでに意気投合してた感じだったよ」
なにを言い出す新羅。ドタチンも戸惑っているようだった。シズちゃんはなるほどと言うように頷いている。
「まあ、とりあえず僕は指名入っちゃったし、門田くんと静雄くん、先に海入ってれば?」
「ああ……じゃあそうさせてもらう」
ドタチンと彼の背中が遠退いていくのを見つめていたら隣から声が掛かった。
「まったく……気をつけるんだよ」
「はいはい……新羅のくせに」
「ひどっ!」
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