ドタチンが来て、その15分後に新羅が来た。

「おはよ! 二人共早いねー」

「てか新羅なにその服。マジウケる」

新羅の私服はダサかった。中学校の頃からそうだったが、センスがないのか、上は青のYシャツで下は赤の短パンという爆発的な格好だ。それに比べ、ドタチンは黒Tにジーパンというラフな格好をしている。ちなみに俺は、半袖の黒パーカと黒ジーンズ。

「あ、静雄くんだ」

その名前にドキリとした。ゆっくり顔を上げてみると、薄い色のジーパンに白のポロシャツ姿をした彼がこちらに向かって走ってきている。

「お前ら早くねーか?」

「あはは、遅れるのは嫌だったからね」

新羅と話してるその姿は普段とは違う。とてもじゃないけどオシャレとは言えないが、かっこいい……スタイルがいいしイケメンだからなんでも似合うんだろうな……ってなに考えてんだ俺。
ドタチンの「行くか」という合図でホームへと向かった。海に行くのなんて、何年振りだろうか。しかも、近くのホテルにお泊するということになった。時間制限があるとゆっくりと遊べないという理由だ。

「さすがに夏休みは混んでるな」

電車の中はぎゅうぎゅうづめだった。俺は360°人に押されていてキツイ。

「……マジない」

汗くさいし息がかかるしちょっと気持ち悪いんだけど。
ドタチンは背が高いからなんとか平気そう。新羅は……乙。シズちゃんはどこだろうと目線を動かすと、手を引っ張られた。

「……!?」

人混みから扉側まで抜かれて、向かい合うようにそこに押し付けられた。

「……ここの方が楽だろ」

すぐ近くで声が聞こえ、この声は……と、自覚すると一気に身体が熱くなった。

「シ、シズちゃん……」

なんでシズちゃんが……。しかも体が、くっついてる。今の向きだと彼の顔は見えない。そうすると逆に俺の顔も彼からは見えないだろうから、良かったと思った。
 この体制になって、さきほどよりも楽になったのは事実で、彼が俺を覆うようにしてくれていて周りからの接触を防いでくれている。

「……ごめんねシズちゃん」

「なんで謝んだよ。お前ちっちゃいんだからこういう時辛いだろ」

「新羅は……」

「きにすんな」

なんで新羅じゃなくて俺を助けんだよ。顔の熱がもっと高まるのを感じた。着くまでずっとこのままなのかと半端なく心臓が高まった。







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