翌日、俺はチャイムギリギリに学校に着いた。

教室には変わらず新羅がいて、いつも通りに俺の後ろの席に座りながら窓から外を眺めていた。
俺は何か言うでもなく多少の気まずさを交えながら自分の席へ座った。

「おはよ。臨也」

一瞬びくりとしてしまった。表には出してないからバレてないはずだけど。
ぎこちなく後ろを向くと、新羅はいつもの笑顔でいた。

「今日はギリギリだね。寝坊でもしたの?」

あまりにいつも通りの新羅に拍子抜け……というか逆に気まずさが増した。これは俺も普通に返すべきか。ていうかなんでこんな普通でいられるんだ。怒ってるんじゃなかったのかよ。

「ああ、妹のこと、学校まで送ってたから……」

ドギマギしながらも、思ったより自然に声が出た。新羅がへー。と、反応をしたとこでチャイムが鳴り、前を向いた。もちろんまともに受ける気がない俺は堂々と携帯を使う。何か言われたら言い返してやろう。
そんな俺を盾にするように後ろでは新羅が携帯を使っているのが雰囲気で伝わる。めずらしい。こいつが好きな科学の時間だというのに。

そんな新羅のことを考えた。昨日、あの後も結構考えたんだけど。もう話さなくなるのかな。とか、無視されんのかな。とか。でもそういう奴じゃなかった。昨日あったことはそれはそれで、今日学校にいる俺達はこれはこれなんだ。新羅にとっての中心は彼女だからそれ以外の面では全て割り切っている。そんな奴だからこそ昨日のことを出そうとはしないのだろう。てか、彼なりに何か察してくれたのだろう。
とりあえず、俺は安心した。新羅が普通でいてくれたことに。
そんなことを思っている時、新羅からメールがあってびっくりした。
なんだ。とすぐに開くとそこにはこう書かれていた。「門田くんが今屋上にいる。君と話がしたいらしいから行ってあげれば?」
俺はすぐに分かった。屋上にいるのがドタチンでないことを。だって、ドタチンは俺のメアドを知ってるし、昨日知り合ったばかりの新羅を通して伝えるなんて面倒な方法をわざわざとらないと思う。こんな明らかすぎる内容を送ってきたのはわざとなのだろう。行ってあげれば? なんて投げやりな文は彼らしい。まるで興味がなさそうだ。俺が選べばいいのだけど、俺は行くことにした。

「先生ちょっと抜けます」

返答を聞く前に席から離れ教室を出た。先生の慌てたような声がしたが気にしない。新羅の顔は見なかったが、なんともないような顔をしていたことは安易に予想できた。

なんで行くのか。スルーしてしまう方が楽なのに。でもスルーしなかった。屋上にいる人物に会って、俺は――

ガチャ

扉を開けたら、ぶわっと生温い風が吹いてきた。空は真っ青で、白くて綺麗な雲が流れていた。
扉を閉じて、フェンス越しにどこかを見ている彼の背中に呼び掛けた。

「シズちゃん」

振り向いた彼と、視線が絡んだ。眉間にしわが寄っていて、複雑そうな顔をしていた。

「臨也」

名前を呼ばれただけで、涙が出そうになった。







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