家に帰ってから、妹たちは風呂に入って夕飯を食べて、そしてすぐに寝た。疲れていたのだろう。
やっぱり家族で食べるご飯はおいしくて、幸せだった。夕飯を作ってる時に風呂から聞こえる妹の声に日常が帰ってきたことを感じた。広すぎた家の中も今は満たされてるように見える。
俺も疲れたし、そろそろ寝よう。そう思いパソコンを閉じたと同時に携帯が鳴った。画面を見てみれば、そこには平和島静雄と表示されていた。一瞬で体が強ばる。なんで電話なんかしてくるんだよ。もう終わったんじゃないのかよ。震える手で携帯を取り、ピッ 電話を切った。冷静に考えばあれだ。俺に怒りの電話をしてきたのだと分かった。あんなことがあってまだ俺にいい意味で執着するはずがない。出なくていいんだ。そしたらもう一度携帯が鳴った。また彼だった。なんなんだちくしょう。ムカついて今度は携帯の電源ごと切ってやった。話すことなんてない。怒りをぶつけられたってなんとも言えない。彼の名前を見るだけて体が重くなった。彼は俺の名前を見て憎悪しか感じてないだろうが。そう思いつつもやはり心のどこかで期待してしまう俺がいた。
「ああもう……」
眠気が吹っ飛んでしまった。家の中にいる気が起こらず、静かに外に出た。
エントランスホールから出ると、ポツリ ポツリと小雨が降っていた。俺は空を見上げる。この位なら気にするまでもないか。すぐ近くのコンビニまで行ってなんか買おう。
その前に、
俺は携帯を開いて電源を入れ直した。着信が6件あった。時間を見ると連続で掛けていたようだ。そして、また鳴り出した。
『……臨也?』
俺は無言でそれに出た。彼の声が聞こえる。
『なんか反応しろよ……まあいいや。なあ、お前、嘘だろ? 俺はまだ信じてねえからな』
何故出たのだろう。よく分かんない。彼が何を考えてるのか知りたかったからなのだろうか。俺の期待通り彼は怒ってなかった。
『だって、おかしいだろ。有り得ねえよ。全部嘘だったとか、それが嘘としか思えねえ。……なあ臨也』
そこで俺は切った。自分から出といてその内容は聞くに耐えなかった。あーあ最悪。あんなことした相手に怒ってなかったよ。それどころか信じてたよ。なんでそんなにいい人なんだよ。なんで俺は喜んでるんだよ。
心が軽くなったような気がするし、重くなったような気もする。パタンと携帯を閉じポケットに突っ込む。一歩踏み出したとこで見知った姿がこっちに近づいてきた。
「……新羅」
普通このタイミングはシズちゃんが来るとこだろ。とかなんて想像しちゃったけどそこにあるのは彼じゃなくて中学からの友人の姿だ。
「臨也。ちょーっと話したいんだけど、いいかな?」
「断る選択肢なんてないくせに」
そいつはさしていた傘を閉じ、カツカツとローファーの音を響かせ俺と2メートルの距離を取り、正面に立つ。新羅は、いやに真面目な顔だった。
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