夕食を食べ終えて、俺たちは10分ほど歩いて芝浦アンカレイジというとこに着き、そこからエレベーターに乗り、7階建てくらいの高さに上がってレインボーブリッジの遊歩道に着いた。
俺たちが歩くノースルートからはお台場がよく見える。
空の色は深みのある澄んだ青で。星がちらほらと輝いていた。


「気持ちいーな」

海を見下ろしながら彼が言った。

「そうだね」

海風がびゅう、と吹き俺と彼の髪を揺らす。同じ風を感じて、一緒にいられるこの時は、あとどのくらい続くのだろうか。


「シズちゃんは俺のこと好き?」

「なんだよ急に。……好きだぜ」

「そう」

「お前は?」

「んー……」

最後に、と。俺は彼の言葉で満たされてるのに俺が彼を満たすことは出来なかった。そのことは酷く悲しく、空しい。


「なあ……お前今日、変じゃね?」

「なんで?」

「食事してる時とか、なんか違ってたっつーか……」

「俺は普通だよ」

彼は内側……まあ、海側を歩いている。その位置には意味があった。
俺のすぐ横をゆりかもめが走り、先ほどよりも強い風が学ランと髪を激しく揺らした。
数メートル先に目を向けると、そこには見覚えのある小さい影が二つ、と、3日振りの男の姿が視界に入った。

……ここまでか。


ぴたりと足を止めると、それに補って彼も数歩先で足を止めた。

「どうした?」

「ねえ、シズちゃん」

「……どうした」

俺の様子が変わったことに気づいたのか、踵を返して俺の隣に寄ってきたところで彼の肩を力任せにレールに押し付け、上半身から海に落ちそうになる、というところまで力を込める。彼に海側を歩かせてたのはこの一連の動作がスムーズにいくためにだ。俺はその体制のまま、そこでまた話を始めた。俺が俯いてるせいで彼の表情が窺えなかったが顔を上げる勇気もない。

「ねえシズちゃん」

「な、んだよ」


「俺は、シズちゃんに嘘ついてた」







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