臨也Side
※温いエロ有り
ふと思った。
俺達のこの関係が終わったとしたら、その後の俺達はどうなるのだろうと。
殺し合って抱き合ってキスしてセックスして。
シズちゃんは俺が池袋に行くと必ずと言っていいほど追い掛けてくる。そしてたまに新宿に構える事務所に来ては愛し合う。
客観的に見たらおかしいとは思うがこれが俺達だ。寧ろ愛し合うだけなんて気持ち悪い。でも殴り合うだけっていうのはおかしい。
ただ別れたとしたらどうなるのだろう。殺し合うだけ? いやむしろそれすらなくなって無関係の他人になってしまうかもしれない。
そこまで考えて俺の思考は現実に戻された。
「ひゃっ……!」
「……考え事か? ずいぶん余裕だな」
今俺は、シズちゃんとセックスをしている。すでにクライマックスで、彼のそそり立つ性器は俺の中に入っている。がしがしと腰を揺さぶられそろそろお互い限界が近い。
「はっ……シ、ズちゃん……も、イきそ……」
荒く息をしながらシズちゃんの首に腕を回すと一層深く貫かれ体がびくびくと麻痺を起こし勢いよく精液が二人の腹にかかった。顔までちょっと飛んだ。
「っく……」
低く呻いたシズちゃんが続くように中に精を吐き出した。熱い。とても熱い。
しばらく熱がおさまるまで抱き合っていて、荒い息遣いが聞こえなくなった頃にシズちゃんが俺の中から出ていった。
「……何考えてた」
俺を見下ろすように見つめてきて問われた事に、素直に答えるべきか悩んだが情事の後のあまり回らない頭だと上手い逃げ道も見つからず、素直にポツリポツリと語り出す。
「――もしさあ、シズちゃんと俺が別れたら、その後はどうなるんだろうって思った」
「……」
「今の関係が消えてその後俺達に残るモノは何もないんじゃないかって。別れてもなお殺し合いだけするようには思えないし、体だけの関係も……ないな。そしたら俺達どうなっちゃうんだろうね」
自分には似つかわないような、比較的真面目な面持ちで淡々と話した。
シズちゃんはしばらく黙った。俺も何も言わなかった。別に沈黙が痛い訳ではなかったし。
「……お前、恐いのか?」
どのくらい経っただろう。意識が沈んでしまいそうになった頃にシズちゃんが口を開いた。
「……恐いって……なにが」
なんとなくシズちゃんの言おうとしている事は分かった。だがそれをいちいち口にするのは億劫だから彼に委ねた。
「俺と別れるのが、恐いんだろ」
ああその通りだ。結論を一言で表してしまえばそれはとてもシンプルで人間臭かった。
「……シズちゃんは、恐い?」
とりあえず今彼の前では肯定も否定もせず逆に問い返す。彼はふ、と笑って覆いかぶさるようにして俺を強く抱きしめた。温かい。
「恐くない」
肩口に顔を埋められているせいで表情は伺えなかったが、俺はその言葉に少しばかり目を見開いた。
「……なんで」
自分の腕を彼に回すことができずだらりとしたまま会話を続ける。空気の振動で彼の表情はまだ笑っている事が分かった。
「だって、一生離さねえから」
そんな確証がどこにある。と、少々呆れたつもりだったが呆れるどころか俺の頬に伝う温かいモノはなんだ。そして、現在進行形で彼の背に回している腕はなんだ。
――そして理解した。ベタすぎる嘯いた台詞に俺は感銘を受けていたんだ。
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