Vのバレンタインデー
「さて、こんなものかな」
今日はバレンタインデー。僕は朝からキッチンに立ち、手作りのチョコレートを作っています。
作っているのはトリュフですよ。今、材料を混ぜて冷やしておいたチョコを丸めて形を作ったところです。
これは誰に贈るものかって?もちろん、家族ですよ。
僕の大好きな家族の為に、イベントの力を借りてですけど、たまにはサービスをしようと思って。
さっきW兄様とトロンが茶化しに来てチョコレートをつまんだりしていましたけど、それ以外はあまり邪魔をされずに順調に作業を進められています。
今日はバレンタインデーですよ、って言ったらトロンは「楽しみにしているよ」って言ってくれて。W兄様も、「大丈夫かよ」なんて言いながらも顔が綻んでいました。
きっと兄様は外でもたくさん貰うのでしょうけど、気持ちならファンのチョコレートなんかには負けませんから。
冷蔵庫の中には、すでに二皿分の形作られたものが入っています。これは三つ目。
そう、誰に贈るかによって味を分けてあるんです。
奥の左のお皿はX兄様の分。X兄様は大人だから、ラム酒を混ぜてあります。それにあまり甘い味が好きではないから、少し砂糖の量を抑えてビターにしてあるんです。
そして右はW兄様の分。W兄様はイチゴが好きなので、少し甘めにして、イチゴジャムを混ぜて作ってみたんです。チョコも可愛らしくピンク色です。
そして今作っていたのはトロンの分。トロンのは生クリームを多くしてあります。そしてナッツやウエハースも入れて、チョコだけで飽きないようにしてみました。
見た目や味の相性も大切ですが、作るに当たって一番なくてはならないのはやっぱり愛情ですよね。
味が微妙でも、愛情でカバーできます。大切な人のために一生懸命作ること、それが大切です。
そうやって心を込めたものをプレゼントできるのがバレンタインデーだと思うんですよね。
僕は料理があまり得意じゃないし、上手くないけど、頑張ればきっとトロン達は喜んで食べてくれると思うんです。
さて、あとはこれを冷やしてそれぞれラッピングすれば出来上がりです。夕食の時には渡せるでしょう。
っと、その前に・・・
Vは冷蔵庫から二つの皿を取り出した。先に作っておいたXとWの分のチョコレートだ。
三つの皿を並べると、左手の甲を皿にかざした。左手に宿った紋章が表れ、チョコレートが光に包まれた。
光が収まると、Vはいたずらを仕掛けた子供のように微笑んだ。
ふふっ・・・これでよしっと。
え、今何をしてたかって?それを聞くんですか、野暮だなぁ。
これはね、・・・おまじないのようなものですよ。僕の愛情をこのチョコレートに込めたんです。
その辺のお薬よりも紋章の力の方がずっと効き目があるし、バレませんからね。
ああ、今夜が楽しみだなあ・・・さて、誰から可愛がって差し上げましょうか・・・。
4人で、なんていうのもいいかもしれませんね。
Vは冷蔵庫の奥の方へ皿を並べ扉を閉じ、ラッピングの用意をするために部屋へと戻るのだった。
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