お買いもの

※ミザエルが女の子


「カイト、これはどうだ?」

 ミザエルは花柄のワンピースを身に纏って試着室から現れた。カイトは顎に手を当てて少し考える素振りを見せると、「似合うんじゃないか」と一言発した。

「何だ、その間は」

「悪くはない……だが、一つ前のものと比べると甲乙付けがたい」

「やはりそうか!私としてはどちらもいいと思うが……ううん、決めきれん」

「お前の気に入る方を買えばいいだろう」

「どっちもいいから悩んでいるのではないか!じゃあカイト、貴様が決めろ!」

「何で俺が……」

「それは…………」

 威勢の良さが段々と影を潜めていく。ミザエルは視線を泳がせ、ワンピースの裾を握りながら答えた。

「お……お前が買うと言うから私は仕方がなく着てやってるんだ……どうせなら、その……お前が似合うと感じる方を買った方がお前にとってはいい買い物だろう」

 あたかもカイトの買い物に付き合ってやっているという口振りだが、とどの詰まり、せっかく買うならカイトが似合うと思った方を買いたいのだろう。
 カイトはそんな可愛らしいミザエルを抱き締めて撫でてやりたい衝動に駆られたが公衆の面前であるためぐっと抑える。
 急がなくとも、時間はまだ用意されているのだ。

「どっちも買ってやる」

 カイトの言葉に、ミザエルの顔がパアッと明るくなる。声に出さずとも「いいのか!?」と、その表情が言っている。
 全く、相変わらず変化がわかりやすく喜怒哀楽のハッキリしている奴だった。

「いずれ、お前にはもっといいものを着せてやる」

 いい買い物をして上機嫌なミザエルに、カイトは静かに言った。

「もっといいもの?」

「ああ、お前に良く似合うだろう、純白のドレスをな」

 ミザエルの耳元で囁いたカイトの顔は穏やかではあったが、意地の悪い笑顔だった。まるで、意味を理解したミザエルが顔を赤らめて騒ぎ出すことを予見していたかのように。

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