ツナガル物語

※遊矢がWのデュエルに憧れてたとかいうチラ裏レベルの妄想。Wは存在の示唆のみ


 小さい頃、憧れたデュエリストがいた。
 今遊矢が、尊敬する人物はと聞かれたら間違いなく父親と答えるだろう。父親はアクションデュエルの部門で有名になり、その軽やかな動きとデュエルで見る人々を魅了した。遊矢から見た父親は格好よくて、尊敬できる人だった。

「時代が求めているのはもう、ただ戦うだけのデュエルではない。これからは人々を湧かせ、楽しませるエンターテイメントデュエルこそが求められるんだ」

 父親はいつもそう遊矢に言って聞かせた。プロデュエリストという仕事に誇りを持っているからこそ言える言葉だ。父親は常に、時代の先を見ていた。
 しかし、それとは別に憧れる人は、と聞かれれば父親の他にもう一人、存在する。
 遊矢が小さかった頃はアクションデュエルが注目され始めたもののまだ本格的ではなく、スタンディングでのデュエル、もしくはバイクを使ったライディングデュエルが主流の時代。また、エンターテイメント性よりもデュエルの強さそのものに注目が置かれていた時代だった。

 「彼」はスタンディングデュエルのエクシーズ召喚の部門で、よく見たデュエリストだった。デュエルの腕も強いが、何よりも観客を楽しませることが上手かった。相手の猛攻を潜り抜けるタクティクスは、いつも自分のライフを削られ、危うい線を行く。辛勝が多いと思っていたが、今思い返せばそれが彼のデュエルスタイルであり観客を楽しませる為のデュエルだったとわかる。本当は、彼はもっと強いのだ。どのように戦えば観客が最も喜び楽しんでくれるのかを、彼は知り尽くしていたのだ。
 追い詰められるハラハラドキドキとした緊張感、そしてギリギリのところから繰り広げられる逆転劇。そのカタルシスは見るものを魅了する。また彼のデュエルが見たくなる。それが、彼が観客にかける「魔法」だった。遊矢は、いつも彼のデュエルを見てワクワクしていた。今日はどうやって勝つんだろう。どんなデュエルを見せてくれるんだろう。彼が勝つ、その勝敗自体ではなく彼のデュエルそのものが見たくて、テレビにかじりついた。
 そして、忘れない彼の決め台詞。観客に向かい、拳を突き上げて自信たっぷりの笑みで彼はこう言うのだ。「ファンサービスだ!」と。

 幼い遊矢にとって彼は、父親に次ぐ目標の人となった。強さは勿論、観客を湧かせるデュエルに憧れた。大きくなって、プロデュエリストになったらあんなデュエルがしたい。是非自分とデュエルしてほしい。そう思った。そして「あなたに憧れてプロデュエリストを目指しました」と、彼の前に立って言いたかった。
 だが残念ながら彼は、アクションデュエルが本格的に導入される前にプロの世界から引退し、表舞台から退いてしまった。彼は引退表明では晴れやかに笑っていたけれど、本当に本当に残念で仕方がなくて遊矢は泣いた。これからデュエルができないあの人の分まで泣いた。

 そして今、遊矢は父親の夢を継ぐために塾に通い、プロデュエリストを目指している。胸には今なお遊矢を魅了し続ける二人のデュエリスト。父親の優しい眼差しと彼の自信に満ちた白い背中は今でも鮮明に覚えている。彼らは姿を見せなくなった今でも遊矢の目標であり、憧れとして存在している。
 新しく手に入れたペンデュラム召喚。それは新しい時代の扉を開く切り札となり得るのだろうか。父親が言った、「時代が求めるデュエル」を先駆ける新しい希望になるのだろうか。それはまだ、遊矢自身にもわからない。
 だがこれだけははっきりとわかる。自分の時代がやってきたのだと。彼らのエンターテイメントデュエルを受け継ぐのは他でもない、遊矢なのだ。ずっと見て、憧れてきたからこそ。今も胸に息づく彼らの物語を、今度は自分が受け継ぐ番だと。そう、遊矢は確信しているのだ。


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なんかこういうのもいいんじゃないですかっていうif物語を妄想しただけ
ちょっとロマンがあるかなーとか思って。
なんで遊馬じゃなくてWなのか…遊馬先生の進路がなんとなくプロデュエリストっぽくないなと思ったので(笑)
遊馬先生は教師が似合うと思うよ
パラレルワールド説はスルーの方向で…(笑)

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