※凄まじいリア充仕様。
ゆるゆるぐだぐだとスローセックルしてるので滅茶苦茶長い


 夜が更け月明かりが差す暗い部屋の寝台に横たわり、ナッシュは今日のことを思い返した。いつもと違う女の子らしい格好をしたドルベ。彼女はあの格好に相当抵抗があったらしくナッシュが気にしないと言ってもずっと、恥ずかしいと言って俯いていた。しかしナッシュが喜ぶなら、と我慢をしてくれていたのだろう。
 普段男のような生活をする彼女だが、それでも時折はにかんだり好きな菓子に目を輝かせたり、指輪を渡した時には涙を流して喜んだりと今日見せた一面は女性そのものだった。それが自分だけに見せるものだと思うと、愛情の他にナッシュの中にある独占欲や支配欲が満たされ、更に強くなる。

「ナッシュ、起きてるか?」

 噂をすればなんとやら、扉が開いて今丁度ナッシュが想い描いていた本人が現れた。湯浴みから戻ったのだろう。彼女の為の部屋はこの王宮になく、ナッシュの部屋に泊まることになっている。無論このことはごく親い近臣とメラグだけが知っている事実なのだが。
 短く返事をしてやれば、彼女はまだ寝てないのかと言ってつかつかと寝台に歩み寄り、腰かけた。

「何か考え事か?」

「お前のこと考えてた」

 特に揶揄うことも意地悪く言うこともせずポツリと一言そう零すと、ドルベは照れ臭そうに口元を結んで左手で覆った。キラリと月明かりに照らされて輝く青と白の光は今日買ってやった指輪のものだ。本当に、お守りのように肌身離さず付けている。

「それ、もっとよく見せろよ」

 そう言うと彼女は指輪を外そうとするのでナッシュは些か強引に手を引っ張った。指輪だけが見たいのではない。ナッシュにとってそれはただの金属と石でしかないが彼女の指にあるから価値があるのだ。突然引っ張られたドルベは重心を崩して小さな悲鳴を上げ、ナッシュの胸に倒れた。
 後ろから抱え、左手を添えて彼女の左手を持ち上げる。埋め込まれた石は光源の強さや光の当たり具合で輝きや色を変えるようだ。ナッシュはそのまま左手を口元に持ってゆき、昼間彼女がしたのと同じように指輪に接吻した。

「ナッシュ」

「ん」

「くすぐったい…」

 ナッシュが薬指だけでなく他の指にも接吻を施していると、小さく笑う声が聞こえた。そんな彼女の声に少し悪戯心が芽生え、するりと反対の手で脇腹を撫でる。

「あっ…やだ、ナッシュ!」

「何だ?」

「ふふっ、くすぐった…、あははっ」

「ここ弱いのかお前」

 揶揄うように言ってやると、知ってるくせに、と彼女は笑いながら眼を潤ませた。

「私もやってやる」

「おい、馬鹿っ…ははっ!」

 やられっぱなしでは済まさないドルベが反撃を開始し、ナッシュの腹筋をツンツンとつつきその周辺を指先で擽り始めた。ナッシュも堪らず笑い声を上げ、彼女の首筋や脇腹を擽る。童心に返り、ふざけあった幼い頃のように笑いながら擽り合った。
 だが純粋無垢だったあの頃とは違い、二人は親友から別の関係に発展してしまった。故に次第にこの童子のような戯れもまた、違う悪戯へと変化してゆく。

「あっ…」

「ん、フフッ。気持ちいいか?」

 先に声を上げたのはナッシュだった。上に居たドルベが部屋着の袷から見える鎖骨に口付け始めた。ナッシュの反応にうっそりと微笑みながら胸元を舐め、音を立てて吸う。無邪気だが卑猥に舌を出して皮膚を舐める様が妖艶に映り、ナッシュの男の性が熱を持ち始めた。

「ドルベ……」

 名前を呼んで手を差し伸べると、彼女は素直にその手に従った。身体を起こしてその身を抱え、静かに唇を重ねる。しばらくそうしたまま、互いの唇を吸い合った。背中に回された彼女の手に力が入り、顔と身体がより密着する。最後に長く吸って、顔を離した。

「ナッシュ……して?」

 眼を潤ませ、唇を艶めかせた彼女が頬を上気させて首を傾げる。元よりそのつもりだったナッシュは一つ頷いて、自分が上になるようにドルベを寝台に寝かせた。
 再び上から、ゆっくりと口付ける。先ほどのような軽いものではなく、今度は情事の為の口付け。薄く開いた唇から舌を滑り込ませて絡め、唾液を啜る。ドルベの腕が愛おしそうにナッシュの腕や肩を撫でてくるのを感じ、ナッシュもまた手で彼女を撫でて行く。やけに大きく金属の存在を感じる。

「ん…」

 唇を離すと甘い吐息が漏れた。微かに聞こえたそれに欲望をまた一つ胸に秘めて、ナッシュは頬へと唇を落とす。ドルベの頭を抱え込み耳や首筋を食むように口付ける傍ら、服の上から円を描くように胸を撫でる。手が小さく存在を主張する突起に触れるとドルベの身体がピクンと跳ねた。

「…っは…あ、…ナッシュ…」

 服を胸の上までたくし上げる。普段は晒しを巻いているが今は無防備で、すぐに膨らみと二つの突起が姿を現した。ナッシュの手に少し余るくらいのそれを揉みながら柔らかい脂肪に口付けていくと、ドルベは熱い息を吐いた。感じている様子に口角を上げ、中心の突起を口に含んで舌で転がす。

「んっ…ああ…ぁ…」

「気持ちいいか」

 見せつけるように舐める合間に聞いてやると、ドルベは眉を顰め唇を結びながら頷いた。その快感に耐えるような顔にナッシュは舌を動かしながら微笑む。漏れる息と声を頭上で聞きながら、時間をかけて両方の乳首を愛撫した。
 中途半端にかかった服を脱がせ、上半身を露にしてドルベを再び寝かせた。 よく締まり、刻まれた腹筋や浮き出た肋骨が目に入る。更に目を凝らせば暗がりに目立つ傷がいくつか見えた。一種の芸術を見ている心地を覚えながらナッシュが指先で傷や筋を撫でると、彼女は膝を擦り合わせながら控えめな声を出した。

「あ…あまり、見ないで、くれ……」

「なんでだ」

「私の身体、女らしくないから……そんなの見ても、楽しくないだろう…」

 ドルベは身体が筋肉質で一般的な女性よりも丸みがなく、背も高い。傷は服を着てしまえば隠れるが、丸みのない身体のラインや手足の絞まった筋肉は隠せない。そんな女らしくない自分を彼女は度々嘆いていた。自分の身体は戦場に立ための身体であって、ナッシュの隣に女として立つのには相応しくない身体だと。
 肩を竦める彼女に、ナッシュはその頬を撫でながら馬鹿、と呟いた。

「女らしい、らしくないっていうのは好みの基準にはならねぇ」

 丸みがなくても脂肪が少なくても、ナッシュからしてみれば見ていて飽きない、格好いいと思う身体だ。バランスの良い筋肉の付き方はむしろ美しいとさえ思う。それに、本人は気づいていないかもしれないが、胸以外にも少なからず脂肪はあるのだ。抱き締めた時にはちゃんと柔らかいのだから。

「俺はお前が好きだからこの身体も好きだ。絶世の美女だろうがなんだろうが、俺にとってお前の身体以上に価値のある奴はいない」

「ナッシュ、……っ」

 ドルベは両手で顔を覆った。彼女のことだからきっとナッシュの言葉に歓喜して泣いているのだろう、と推測しながら抱き締め、指輪と手の甲に口付ける。そっと手を退かすと案の定、泣き顔と対面した。

「お前そんなに泣いてたら身体の水がなくなっちまうぞ」

「だって…君が嬉しいことを言うから…」

「俺は思った通りのことを言ったまでだ」

 ナッシュは詩人ではないから上手いことや気の利いたことは言えない。言葉はぶっきらぼうで少ないがその分、行動で示す男だ。言葉はなくても、気持ちが伝わればそれでいいと思っている。身体は、口よりも雄弁に言葉を紡ぐ。
 彼女ともう一度唇を吸い合って、ナッシュは再び顔を身体に埋める。自然に、手が繋がれた。薄く残る傷も浮き出た所もへこんだところも、舌と唇で愛撫してゆく。

「あん、…っぁ、…ナッシュ……」

 やめろ、とも言わずナッシュのやりたいようにさせながら、ドルベは控えめに喘いだ。ピクン、ピクンと愛撫に応えるように震える身体がいじらしい。 ナッシュが愛撫を通していかにこの身体が好きかと証明するのを見守っているようだった。
 ドルベを俯せにして、背筋の線を舌で辿りながら布の下から締まった尻を撫でる。そこは乗馬で鍛えられ筋肉と脂肪がバランス良く付き、触っていて心地が良い。脚の間をそっと撫でると、既に濡れていて指に愛液が絡みついた。

「濡れてる」

「い…わな…いで……恥ずかしい…」

「事実だろ」

「あっ…」

 下も脱がして、尻を左右に開く。暗くて良くわからないが、さぞかし濡れそぼって指輪に劣らないくらいに光っているのだろう。恥ずかしそうに揺れる尻に構わず、ナッシュはそこに口付けた。

「ああっ…ぁ、やあ!あっ、あ…!」

 先程まで控えめだったドルベの高い声が部屋に響き、その甘い声にゾクリゾクリと背中を粟立たせた。腰を押さえ、水を舌で弾くように音を立てて入口を舌でなぞり、溢れ出る愛液を啜る。舌をその中に差し込んで揺らすと、彼女が一際高い声を上げて硬直した。カクリと身体から力が抜けたと思うと脈打つように震えてとぷりと更に愛液が溢れた。どうやら、達したようだ。

「駄目だな……」

「ふぇ、…ナッシュ…?」

「俺が持たねぇ」

 きょとんとするドルベを尻目に、身体を退けて自分の服を脱ぐ。決して早い方だとは自分で思わないが、すっかり興奮してしまったナッシュは挿入まで持ちそうになかった。もっと色々、愛撫してやりたいのに。

「なんだ、そういうことか…では私が、してあげる」

「ああ」

 脚の間にドルベが入り込み、勃起した性器をそっと手で包んだ。亀頭がヒクリと震え、ナッシュは顔をしかめた。小さく息を漏らしながら眼を閉じて性器を口で扱くドルベの髪を、ナッシュも熱く息を吐きながら撫でてやる。
 温かい感触と時折漏れる吐息と水音、何よりナッシュを懸命に愛撫する彼女の姿に気持ちが逸る。何度もドルベがこうして奉仕してくれるのを見てきたが、その姿や快感に飽きることはなかった。そこまで上手くなくてもいつも彼女は嬉しそうに一生懸命ナッシュを愛してくれるから、技術による快感ではなく、心が震えるのだ。例え技術を持つ者でも、ここまでナッシュを愛おしそうに奉仕してくれる者はいないだろう。

「ドルベ、俺もしていいか」

 彼女の銀髪を撫でながら問うと、頷いてナッシュから口を離した。ナッシュが仰向けに横たわり、ドルベは逆向きに覆い被さる。彼女が再び奉仕を始めたのを見て、ナッシュも大腿を撫でて先程愛撫したそこに口付けた。

「ん…」

「ん、ぐ……ふっ……」

 先程触らなかった、固くなっている芽を中心に愛撫を施してやる。乳首を愛撫するときと同じように口に含んで舌で転がしたり、甘噛みをすると、止めどなく溢れる愛液がナッシュの顔を濡らした。もうとろとろに蕩けてしまっているそこに栓をするように二本の指を差し込む。
 クチュクチュと音を立てて中を掻き混ぜながら芽を舌でつつく。優しい愛撫とナッシュのモノを舐める口から漏れる吐息がナッシュの欲望を更に掻き立て、自然とナッシュの動きも早まってゆく。

「あ、っん、…ぁっ!はぁ、…あぁっ!あ、イく…イく、ぅ……あっ!」

 再び、息を詰めてドルベが達した。ナッシュのモノを持ったまま、腰をビクンビクンと痙攣させている。膣がヒクヒクと蠢き、ナッシュの指を締め付けた。

「あっ……!ドルベ、俺のも擦ってくれ」

 彼女の奉仕と達した姿で、ナッシュもそろそろ限界が来ていた。切羽詰まった声で頼むと、再び柔らかくて熱い粘膜に性器が包まれる。先端を強く吸われて根元を指で擦られ、射精感が一気に募る。

「あぁっ…、出る!俺も、っ……イく……!」

 ドルベの口内を抉るように腰を浮かし、ナッシュは射精した。性器を巡る血管が脈動して精液が飛ぶ快感にしばし眼を閉じて放心する。

「あ……すまねぇ。口ん中出しちまった」

「ん……構わない」

 ハッと我に返ってドルベを見ると、口の端から垂れる白濁を指で拭って口に含んでいた。そこまでしなくていいから出せ、と布を差し出すが彼女は首を振って拒否した。

「君の子供…下の口では飲めないのだから……せめてこっちで飲ませてくれ」

「そんな言葉どこで覚えてくるんだよ」

 なんとまあ彼女はどこまで健気なのだろう。どこまで、ナッシュを惚れさせば気が済むのだろうか。ナッシュが色々言うと恥ずかしいだの嬉しいだのとすぐに赤面したり泣いたりするのに、こういうことを平気で言い、度肝を抜いてくる彼女は本当にずるい。
 ナッシュは半ば衝動的に、照れを振り払うようにドルベを抱き締めて口付けた。精液の味がして苦い、不味い、などというのは気にならない。ただ、彼女が欲しい。感情に任せた激しい口付けにうっとりと応えてくれる彼女が更に愛しくなる。やはり環境的に可能なら、孕ませるのはドルベ以外にあり得ない、とナッシュは思う。
 口付けながら押し倒して、更に深める。 ナッシュは出したばかりなのに早くもまた興奮していた。

「入れたい。お前ん中、入りたい…」

「ああ…ん、ナッシュ……私も欲しい…」

 最後に唇を一つ吸って離す。ナッシュは再び勃ち始めている自分の性器を更に擦って固くし、荒い息と逸る心を抑えながら膣口に宛がった。

「ハァ、……入れるぞ」

「ああ」

 蕩けた中は熱と快感をもってナッシュを迎え入れた。ヒダがきゅうきゅうとうねって絡み付き、ナッシュは思わず呻き声を上げる。同じように呻いた彼女の頬を抑え込み、覆い被さった。名前を呼んでやればそうするのが自然のことのように唇が重なる。ナッシュをドルベの中に馴染ませるようにゆるゆると腰を動かしながら、唇を貪る。

「あっ…、ぁん…ナッシュ……気持ちいい…」

「ああ…俺もだ。お前ん中…、絡み付いて気持ちいい」

「あ、ん……すき…すき…。ナッシュ、だいすき……。ぁ…すきっ…!あいしてる、っ……」

「俺も…お前が愛おしい……っ、動くぞ、掴まっとけ」

「はぁ、んんっ……たくさん、突いて……あっ、ああっ…!」

 動きを段々と大きくしながら右手で顔を抱え、左手は繋げる。中指と薬指の間に、硬い金属の感触を感じる。ナッシュとドルベを繋ぐ指輪だ。ぎゅっとそれを包むように手を握り込んで中を穿つ。
 口付けをしたいが、甘美な彼女の声も聞いていたい。唯高いだけでない、色を含んで艶めいた声はナッシュの鼓膜と心を震わせた。ナッシュだけを感じて乱れる彼女がこの上なく愛おしい。その心のまま、頬や首筋を吸ってゆく。

「あ、ふっ……あぁ、あっ!あ、あぁっ、んっ…!」

「っく、……」

 ふいに抱き締めたくなって、彼女の身体を抱き起こした。ナッシュの膝の上にドルベが座るようになり、動きを緩めると彼女はくたりとナッシュにしなだれかかった。しっとりと汗の滲んだ背中を撫でてやりながら、こめかみに口付ける。

「ん、…ふふっ」

「どうした」

「頭が蕩けて、…どうにかなってしまいそうだ」

「そうなったら俺が面倒見てやる」

「何を言っているんだ。君にはそんな暇ないだろう」

「お前が俺の世継ぎを産んでくれたら、暇ができるさ」

 ドルベの身体がピクリと震え、強張るのを感じた。ナッシュの冗談を真に受けてしまったのだろうか。彼女は真面目だからナッシュの些細な言葉でまた、悩んでしまうことになるかもしれない。彼女が余計なことを考えてしまわないように抱き締める腕に力を込め、すまない、と耳元で囁いた。

「だが、これが俺の本心だ。お前を孕ませる準備ならいつでもできてる」

「なんだかその言い方……変態みたいだぞ、ナッシュ」

 顔を見合わせて、フッとどちらからともなく噴き出した。妖艶な空気に和やかな色が差し、二人はころころと笑う。ナッシュが眼を閉じて顎を少ししゃくると、今度はドルベがおずおずと口付けを施してきた。
 彼女の唇に吸われるのに任せて、腰を抱えて揺さぶる。くぐもった声が口内に響いたが、振動に耐えられなくなったのか、彼女は唇を離して仰け反った。目の前に現れて揺れる乳房に顔を埋め、その中心に吸いついた。

「ひ、…んんっ!…ん、はぁっ!あぁっ…あ、あっ…!あ、ナッシュ…わ、私、…」

「ん、イきそうか」

 コクコクと頷くのを見て、片手を離して繋がっている入口の縁をぐるっと指でなぞると上にある芽を親指で押さえる。途端に彼女はぎょっとして上擦った声を出した。開きっぱなしの口元から唾液が零れるのも構わず、震えながら喘ぐ姿にまたナッシュの背筋がゾクリと震えた。

「あぁ、ああっ…!あああっ!」

 中で良いところが擦れるように調節し、芽を強めにぐりぐりと刺激してやると彼女は弾けたように浮いて果てた。力を失った身体を支えて動きを止めても痙攣が治まらず、俯いたまま荒い呼吸を繰り返している。これは本格的に絶頂に達したらしい。 顔を上に向けるとぼんやりと焦点の合っていない眼と目が合った。

「おい…おい、大丈夫か」

 軽く頬を何度か叩くと、彼女の眼に光が戻った。一瞬気を失っていたようだ。そんなによかったのか、と問うと頬を染めて口を結び、ふいっと顔を逸らされた。どうやら相当良かったらしい。その様子がまた愛おしくて思わず頬が緩む。耳に唇を寄せて動いて平気か、と訊くとぎゅっと抱きつかれた。それを肯定と取り、再び彼女を抱えて寝台に倒れる。

「俺もそろそろ、イきそうだ」

「ん…来てくれ、ナッシュ……」

 なるべく悟られないように声を低めて振る舞っていたが彼女の艶めかしい喘ぎや果てる姿に、ナッシュももう限界が来ていた。腰が疼くままに、ドルベを押さえつけて本格的に律動を開始し、両脚を肩にかけて奥の方まで穿つ。ナッシュの激しい動きに耐えるように顔を歪め、ドルベはひっきりなしに声を上げた。その顔や声にまた雄が刺激される。ナッシュは速さを緩めずに顔を近づけて名前を呼びながら唇や目尻に溜まった涙を吸った。
 こんなに何度もナッシュを興奮状態に陥れるのは彼女だけだ。唯子種を植える為だけの性交ではこんなにも興奮しないだろう。ナッシュは普段比較的冷静な方なのだから。だが今は、世継ぎのことや自分が一国の国王であることも忘れ、一人の男として愛する人を思うがままに抱いている。子を宿すのを目的とするのではなく、彼女を愛する為に抱いているのだ。
 しかし、だからこそ愛する人に自分の子供を宿して欲しいと思う。自分なら死ぬまで愛するし、幸せにする自信もある。指輪で彼女の人生を縛り付けてしまったが、そうではなく本当に寄り添いたいと願ってしまう。

「ドルベ……ドルベっ……中、出していいか…?」

 思わず、心の声が口をついて出てしまった。しかしこれは、一種の賭けだった。彼女がどう出るのか。これからの人生の全てを、ナッシュが奪い取ってしまってもいいのか。
 彼女は首を横にも縦にも振ることをしなかった。ただ眉を下げ、ナッシュに微笑みかけて眼を閉じた。その目尻から、スッと涙が零れ落ちる。

「っ、く……ああっ…!」

 ナッシュはドルベの腰を掴み、動きを速めた。熱に包まれ、溜まった精液がぐるぐると解放を求めている。
 眼を閉じて彼女の喘ぎ声を聞きながら、上り詰めることだけに集中して動く。次第に頭が白くなる程の快感に包まれてゆき、ナッシュは達した。



「ナッシュ」

「ん、何だ」

 情事が終わった後の余韻に包まれ、二人は後始末もそこそこに寝台に寄り添って転がった。ナッシュが考え事をしていると、ドルベが沈黙を破り、先程まで白濁に濡れていた腹を撫でて不思議そうにナッシュの顔を見上げていた。

「結局、出さなかったな」

「ああ」

「何を考えていた?」

「後々、後悔するような気がしたんだよ」

 彼女の夢を摘み取ってしまうことは、どうしてもナッシュには出来なかった。中に出していいか、と訊いたときに見せた彼女の表情。嬉しさもあってのことだろうが、きっとそれだけではない。諦めや悲しみなどの感情が混ざっていたのをナッシュは感じてしまった。おそらくここで完全に彼女の人生を奪い取ってしまったら、これから先ずっとあの顔を見ることになり、ナッシュはその度に思い出して後悔するだろう。それは本当に、彼女にとって幸せなことなのだろうか。

「幸せって難しいな」

「………」

 彼女はナッシュの言葉に答えなかった。その態度は、ナッシュの推測が本物であったことを裏付けているようなものだった。

「ナッシュ」

「今度は何だ」

「だ、抱き締めて、欲しい……」

 ドルベがゆっくり瞬きをして、小さいけれどハッキリと強請った。ナッシュを気遣っての言葉か、あるいは彼女も心に一抹の寂しさを感じたのか。いずれにせよ、詮ない思考を振り払うには丁度良いと、彼女のお強請りに感謝しつつ腰に腕を回して抱き締めた。夜具の中で肌が擦れる音がして脚が絡まり、ナッシュの背中にも腕が回される。金属の感触には、もう慣れてしまった。熱が冷め始めた身体に人肌の温もりは丁度良く、じんわりとナッシュを包んだ。

「あったかい」

「ん。…なあ、ドルベ」

「何?」

「俺は諦めてねぇからな。戦なんかさっさと終わらせて……俺のとこに帰ってこい」

 この期に及んでまだそんなことを言う自分はつくづく女々しい奴だとは思うが、やはりこの温もりは手離し難い。こめかみにかかる髪を撫でながらやたら真剣に言うナッシュにドルベはありがとう、とクスリと笑った。
 疲れからうとうとと微睡み始めた彼女の髪をすき、口付けを贈る。普段どこか照れ臭くてなかなか言えない言葉も、今独り言のようになら言える。

「いつもありがとう。愛している」

 それはナッシュの中で渦巻く多大な感情のほんの一部分でしかない言葉だったが、彼女にはそれでも充分だったようで、うっすらと寝顔に微笑みを作っていた。

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